はじめに
西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループ関連、とくにアンケート調査報告関連では、振り返っておきたい取り組みは残り3つになりました。
- 日本図書館研究会第302回研究例会(大学図書館問題研究会京都支部との共催)「若手研究者の文献利用環境を巡る問題と図書館へのニーズ」(2014年1月25日、キャンパスプラザ京都、WGメンバーの崎山直樹さんと菊池信彦さんの報告&質疑応答)
- 現代史研究会・東欧史研究会・西洋近現代史研究会共催特別セッション「西洋史若手研究者問題を考える――西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループ報告書をめぐって」(2014年10月18日、青山学院大学6号館)
- 西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループ「西洋史若手研究者問題アンケート調査最終報告会」(2015年5月17日、富山大学五福キャンパス共通教育棟)
そのうち、まず今回は日本図書館研究会・大学図書館問題研究会京都支部共催の企画について、それぞれの研究会ホームページにアップされている報告とtogetterまとめを読んで、コメントを書くつもりでした。*1
個人的には、大学図書館と公共図書館それぞれの役割と連携の可能性についての議論が興味深かったです。しかし、それ以上のコメントはなかなか手ごわく断念しました。
そこで、気を取り直して、今回は、2つめの現代史研・東欧史研・近現研共催の特別セッションについて振り返ります。
これは西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループのウェブアンケート調査のうち、先行して立場別報告書が完成したことに合わせて、それぞれの報告書に、グループメンバー以外からコメントをもらうことを意図したものでした。ちなみに、この立場別報告書は最終報告書にまとまった形で、同WGのウェブサイトのトップページにアップされています。
1 当日のプログラム
まず、当日のプログラムについて紹介しましょう。詳細については、西洋近現代史研究会ウェブサイトに趣旨説明・参考資料も含めた資料PDFがアップされています。リンク先は>>こちらをどうぞ。
当日はわたしから西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループ報告書について、できるかぎり要点をまとめた説明を行いました。その後に、以下の3名の登壇者からコメントをもらいました。
この3コメントにつづいて、自由討論を行いました。
3つの長い歴史ある首都圏の研究会が共催して、この3人のメンバーで、西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループの最終報告書を議論するのだから、それなりに参加者が来るだろうと期待していました。
ところが、当日は本当に関係者以外の参加者は数えるほどで、この問題への関心の希薄化を強く感じました。正直なところ、だいぶ精神的にショックを受けまして、もうこの問題について討論会を企画するとき、来場者数を期待することはやめようと思いました。ひとまずこの問題について人が来ると期待すること自体が間違っている(若手にとってこの企画に来るよりも業績づくりを優先させることは間違っていない)、だから余計なことを考えずにやるべきことをやろうと思い直したことを覚えています。
2 立場別報告書の論点整理
最初にわたしから、①西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループの活動と現状、②立場別報告書の構成、③これまでの論点、④各立場別報告書のポイント、を整理した報告を20分ほど行いました。
当日の配布資料のうち、付表を削除したものを以下に再掲します。
その後、最終報告書にまとめる段階で、ワーキンググループ内で微修正を行った記憶があります。最終報告書は西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループのウェブサイトよりご覧ください。
3 コメントの振り返り
(1)上村コメントについて
まず、上村敏郎さんから大学院生・研究機関研究員報告書についてコメントしてもらいました。
「史学」大学院生数と志願者数の推移
コメント前半では、文部科学省『学校基本調査』より大学院生数および志願者数の推移を表と棒グラフで整理してくれました。
そのグラフは修士課程・博士課程それぞれの学生数と志願者数の推移を、1992年から2013年にかけて、3年ごとに「全体」、「人文科学」、そのうちの「史学」のカテゴリー別に分析したものでした。それをみるといかに「史学」が激減しているかがわかります。
この分析はとても興味深く、その後の日本歴史学協会若手研究者問題検討委員会でウェブアンケート調査を呼びかける際の参考資料の作成に活用しました。*2
- 「大学院拡充化以降の20年間に史学専攻の大学院生・志願者がいかに減少してきたか」(日本歴史学協会若手研究者問題検討委員会「『若手研究者問題』解決に向けた歴史学関係者の研究・生活・ジェンダーに関するウェブ・アンケート調査」ウェブサイト内「参考資料」の「史学専攻院生の推移」より)
所感――とくにキャリアパスについて
コメントの後半部分では、大学院生・研究機関研究員の立場報告書について、感じたことをいくつか指摘されています。
まず、研究職志望者が多数いるこの立場にとって、キャリア形成の展望がみえないのではないか、という点を論じています。一方で、環境が変化し、史学分野の院生数が減少しているものの、研究職の需要と供給が一致しない現状でどのように対応すべきなのか、と問いかけます。
問題点として、ロールモデルの不在とセーフティーネットの不在を挙げます。そのうえで、研究機関研究者以外の複数のキャリア選択の可能にする仕組みを考える必要性を説いました。歴史学は研究職以外のキャリアパスが想像しにくいので、アンケート調査だけでなく、匿名性を高めたうえで、プロソポグラフィ調査を行うことを提案しました。
次に、研究環境の問題として、アンケート調査で浮き彫りになった大学間の格差、具体的には国立と私立の格差、地域格差、所属院生数、(学内)研究会・学会運営の負担を指摘し、大学間・学会間で連携を深める必要性を指摘しています。
そのうえで、大学院生の問題として、とくに経済状況について取り上げています。現在の収入手段として、日本学術振興会(学振)特別研究員DC1・DC2、学内TA・RA、学生支援機構奨学金、その他アルバイトがあるものの、経済的制約によって調査・文献収集・学会参加ができなくなっている現状を確認しました。そのうえで、研究環境づくりの一環として、院生の経済支援に各組織が取り組んでいくことを提案しました。
研究機関研究員については、そのカテゴリーに学振特別研究員、特任研究員、特別研究員があり、その実態は任期・給与・研究以外の業務・研究者番号の有無など多様であることに留意すべき、と指摘しています。さらに、アンケート回答者の男女比が男性8:女性2であることのジェンダーバランスのいびつさについて問いかけました。
最後に、とくにキャリアパスについて、以下のような問いを投げかけてコメントを締めくくりました。
- 現在の西洋史若手研究者が思い描ける理想的なキャリアパスとはどのようなものなのか
- 実際に研究職に就いた人たちのキャリアパスはどのようなものか
- 研究機関研究員はそのキャリアパスのなかでどのような役割を担っているのか(研究機関研究員を経た常勤職への就職率はどの程度なのか)
- 家族形成とキャリア形成の両立は可能なのか
やはり振り返ってみても、現在でも取り組む価値のある指摘が多々みられるコメントですね。とくに、本当の「実態」をつかむことは難しくても、基本に立ち返って、文科省『学校基本調査』で史学専攻の院生数の推移をきちんと把握しておくことは必要だと再確認しました。また、西洋史に限らず、歴史学のそれぞれの分野で、若手研究者が自らのキャリアパスを思い描けるようになるために、ここで提案されたプロソポグラフィ調査は有益でしょう。
(2)辻コメントについて
次に、大学非常勤講師および大学教員の立場について、辻英史さんがコメントしました。
いま、「若手研究者問題」を考えるということ
最初に、当時、つまり2014年時点で「若手研究者問題」を考えることの意味について考察しました。
まず、水月昭道『高学歴ワーキングプア――「フリータ生産工場」としての大学院』(光文社)が2007年に公刊されたのち、世間の注目を浴びたものの、多くの議論が途中で止まっているのではないか、という指摘がありました。*3いくつか改善の兆しがあるものの、目に見える成果とまではいえないのではないか、と問いかけます。
次に、「西洋史の」若手研究者問題が世間の目に触れる形になっていないと述べました。この問題について市販されている書籍の多くは、理系を取り上げており、「西洋史」に関しては、拙稿(「歴史学のアクチュアリティと向き合う」)や崎山直樹さんなどの重要な論考がいくつかあっても、その訴えかけが学会誌を読むような専門家、つまり専任教員に向いているということです。
そして、この問題が解決に向かわない理由として、大学側・専任教員側の関心が低いことを挙げました。そのうえで、専任教員の関心が低い理由として、とくに①単純に大学業務に忙しすぎる、②この問題が構造的なものであるため、個人で解決できる部分が小さいことを指摘しました。
もし専任教員がこの問題に関心が低いとするなら、わたしや辻さん、そしてとても参加者が少なかったこの会に出席する人は、例外的な存在であって、それは辻さん自身――わたしもそうですが――に個人的な思いがあるからだと述べました。そして、自身の研究経歴を紹介してくれました。
アンケートの問題点、今後の課題
そのうえで、アンケートについて問題点を以下のように指摘しています。
- アンケートの実施には大きな意義がある、しかし社会・大学・専任教員に対しての見せ方を工夫する余地がある
- 回答数が少なすぎる(ただし体感と極端に違わなければさほど問題にならない、という統計的な経験則が統計学者にはあると聞いている)
- アンケートの意図がみえにくい(客観性を重視する一方、意図が明確でなければデータの羅列にみえる)
- 各立場で同じ構成をとっているが、データの並べ方に工夫が必要
さらに、西洋史の若手研究者が、他の学問領域と比べてどれほど苦しいのか、そしてそれが「市場競争の原理」では片づけられないほど悪化しているというのであれば、それを具体的的に示す必要があると述べました。
そのうえで、アンケートは回答者の主観が入るので、ほかの定量的な統計データで補足する課題が残されているといいました。たとえば、年間の空きポスト数とその充足率を調べることがありうるものの、ただし「西洋史」というカテゴリーで分析することは実際には困難だろうと補足がありました。
さらに、若手研究者問題の歴史的な動向分析を行う必要性を指摘しました。そこで、榎木大介『博士漂流時代』(ディスカヴァーサイエンス21、2010年)を参照して、1960年代からの理系の状況を振り返り、人文系、そして史学系とはかなり事情が違うことに注意すべきといいます。同書によれば、理系では、1980年代後半からバブル景気とともに民間企業への就職が劇的に増加し、オーバードクター問題が立ち消えになったこと、1990年代の大学院改革は歴史的に新しい事態であったといいます。
これに対して、人文系、とくに史学について以下の論説を取り上げてくれました。
- 二谷貞夫・坂口勉「大学院学生の研究条件」『歴史学研究』第296号、1965年1月、28-32頁。
そこでは中国近代史を専攻する大学院博士課程の院生の1週間の生活が紹介されており、生活・研究の苦しさ、見通しのなさが赤裸々に述べられています(28ー29頁)。
科学研究費が大学院生に保障されているかというと、申請する資格・権利さえも持たないのであり、奨励研究(流動研究)費なども申込んでも多くの場合あたらない。
高校・中学の時間講師(都立学校の場合には毎週1時間で月収833円!)や家庭教師などのアルバイト、それによる研究時間の不足、史料収集や図書館通いの時間不足を補充するための書籍・影印本・史料フィルム購入、その値上がり、アルバイトの増加。この悪循環から脱するときは、同時に研究者の地位からの脱落のときでもある。
結核をはじめ病に倒れた場合にも、大学院学生は一切の保険から除外される。泣き面に蜂どころではない。治療費なきままに生死をさまよう特権が与えられている
(中略)
B君「君は来年どうするんだ」
C君「留年するよ」
B君「奨学金が切れても、暮らせる見通しができたのか」
C君「とんでもない。大学院を出たくとも暇がないから出られないのだよ」
B君「それじゃあ、留年していると、大学とか研究所とかの職につけるのかい?」
C君「とんでもない。そんな職につけるのは文科系とくに歴史関係では例外的な場合だよ。ふつうは何の見通しもなしに残留しているのさ」
人文系でも、団塊世代が「大学大衆化」の時期に増設されたポストに就職していった時期がありましたが、ここで取り上げた事例は、それより少し前の世代となります。いずれにしても、人文系にとってのオーバードクター問題からポストドクター問題への移行を歴史的にどのように理解すべきか、という点は、考察すべき課題である、という指摘でしょう。
提案
最後に、今後の行動の指針として、次の4点を提案しています。
- 訴えはより過激に
もっと厳しい状況をはっきりと訴えること(たとえば奨学金返還問題など)、歴史学、とくに西洋史の大変さをアピールしていくこと
- 構造的な問題
とにかく専任教員の忙しさがすべてであり、アンケート分析でも明確で、これは構造的な問題で全体の問題にも関わってくる。非常勤講師のポストを若手に斡旋することは協力的であるが、非常勤講師への依存率が高すぎて個人の事情を斟酌できない状況になっている。最初の教育歴をどうつけるかについて協力していくこと、雇い止めルールが動いてしまっている。しかし、構造の問題であるために他分野と連携できる可能性があること
- 大学および専任教員に具体的な要求を
個々の専任教員は、この問題を何とかしたいという気持ちを持ち続けている一方で、日々の業務に追われている状況がある。したがって、どうしてほしいのか、具体的な要求を挙げること。この西洋史若手研究者問題ワーキンググループの議論のなかで出てきた、図書館へのアクセスや院生による学会業務への待遇など大いに改善の余地があり、また実行できるのではないか。専任教員が気づかないところを指摘することが大切である。専任教員個人にはできないことばかりのように見えても、ひとつひとつ要求を提示することで動くものがある
- 研究会文化の再生
具体的な要求を専任教員にぶつけることも難しいでしょうし、またこちらからも聞きにくい面があるので、研究会のような場で情報交換すること。そして、専任教員の意識変化を促し、専任教員の間にこの問題に取り組む仲間を増やしていくこと
2017年4月に『歴史評論』第804号に掲載された拙稿「歴史学のなかの若手研究者問題――課題と提言」は、このコメントのなかの歴史的な動向分析について、自分なりに応えようとした試みでした。また、「具体的な要求を」のコメントは、すでに進めていた日本歴史学協会での若手研究者問題検討委員会の取り組みを後押しするものと感じました。歴史学系の若手研究者が具体的な要求を突きつける受け皿を作ろうと考えたのです。*4
(3)中田コメントについて
最後に、女性研究者の立場について、中田瑞穂さんのコメントを振り返ります。
やはりまず、辻コメントと同様に、「西洋史」研究者の特殊性とは何かと問いかけます。そのうえで、今回のアンケート調査結果が「女性研究者」、あるいは「女性就労者」の全体の傾向と共通するのではないかと指摘しました。
常勤職獲得上の困難
まず、「常勤職獲得上の困難」についての考察がありました。女性に非常勤講師の割合が高いという点は、社会全体の傾向とも一致しているといいます。
そのうえで、周囲が「女性だから」という態度でこの状況を是認することは、女性にとって常勤職のポスト獲得に不利に働くデメリットになることを指摘しました。男性は家族扶養への高い圧力の裏面として周囲のサポートがある一方、女性の場合、家族扶養の圧力が弱いものの、周囲のサポートも弱い状況があるということです。
そして、このアンケート調査から、大学院生のリクルートの際に、女性の大学院進学の動機に「指導教員に薦められた」という回答が多いことに注目しました。現在の状況は、男女にかかわらず、西洋史研究での常勤職獲得は困難になる一方、公募が増加し、女性の常勤職獲得も増え、また女性を積極的に取りたいという機関もあると指摘しました。そうであればこそ、大学院進学時に女性研究者自身も専攻テーマの将来性と就職可能性、そして常勤職への自らのアスピレーションを充分に考慮する必要があると述べました。
研究職としてのキャリアと家族形成の両立の難しさ
次に、女性研究者にとっての研究者としてのキャリアと家族形成の両立の難しさについて触れました。女性研究者に非常勤講師の割合が高く、常勤職を得ている女性研究者のうち、家族を形成している割合が男性より少ないことが指摘されました。
その原因として、研究者の職場である大学と研究機関が偏在かつ散在するという矛盾があると述べます。大学は首都圏・関西圏に集中する一方で、就職できる可能性のある大学は全国に散在しているわけです。
パートナーおよび家族との共同生活を優先させるなら、全国に散在する大学の職を求めることが難しく、非常勤ポストの多い首都圏・関西圏で非常勤講師を続ける、あるいは自分の専門とは関わりのない職場に就くといいます。そのうえで、女性研究者は、パートナーのキャリア問題、そして子どもの養育の問題に直面しており、別居婚、単身赴任、あるいは「両住まい」という生活形態が多くなることを指摘します。
ここで「両住まい」という用語を紹介してくれました。これは「生活的にも経済的にも自立した個と個のカップル(法律婚に限定されない)が、職業上の理由で配偶者と日常の住居を別にする二か所居住」という形態で、国立大学の女性研究者の4割が「両住まい」の経験者か、現在そうなっているといいます。以下の文献を取り上げてています。
また、これはアカデミック・カップル問題であって、本人や家族にとっての問題であると同時に、大学にとっても問題であるといって、次の研究も指摘しました。
- Schiebinger, Londa, Andrea Davies Henderson, Shannon K. Gilmartin, Dual-Career Academic Couples: What Universities Need to Know, Stanford: Michelle R. Clayman Institute for Gender Research, 2008.
ライフ・ワーク・バランス
最後に、ライフ・ワーク・バランスについて言及しました。大学教育・研究は、「時間をかければかけるほど成果が上がるタイプの仕事」で、24時間では収まりきらず、研究・教育・学務・家事・育児と男女ともに直面し、高いストレスと時間管理の能力が求められると述べました。
女性研究者にとっての研究機関の「偏在と散在」がもつ影響は、いま振り返ってみて、印象に残りました。また、このコメントで、「両住まい」という概念を知りました。わたしも「両住まい」生活を続けて何年目になるか・・・。
4.自由討論と所感
参加者のほとんどが関係者でしたので、かなり具体的な質疑応答になりました。いくつかを紹介します。
- 研究機関研究員が一様ではないことはその通りで質問を工夫する必要性がある
- キャリアパスの複線化を前提に色々な道を示すことは重要
- 大学院担当教員の意識改革が必要
- スーパーグローバル大学のような大型プロジェクトにどう対応していくのか
- 「理想的なキャリアパス」を得るのが成功というバイアスがあるのではないか
- うまくいかなかった際のキャリアパスを示す必要があるのではないか
- 研究職に就かなかった人がどのようにしたら研究を継続できるのか、研究者のキャリアパスを離れても研究が継続できるとしたら大学院の志望者も増えるのではないか
- 博士号取得者が指導教員との関係性に依存せずに研究者としての身分・地位、つまり博士号取得者が研究者番号を取得できるように保障する機関を設置することを要求してはどうだろうか、そしてその機関に所属することでデータベースを含む大学図書館へのアクセスが保障されるなどのメリットをつくってはどうか、これは研究者としてのアイデンティティと関わる問題
一番最後の部分はわたしがいったことですが、どうでしょうか。退職教員にとっても研究者身分が保障されるというメリットがあると思います。
3コメントのどれも、このあとの日本歴史学協会若手研究者問題特別委員会の活動に反映されています。それだけ示唆的なコメントが多かった有意義な企画でした。それだけに、当日の参加者があまりに少なかったことはとても残念でした。
社会に訴えかけるようにアピールを工夫する必要があるのでしょうが、そういったことは苦手でして。ちまちま記録していくことのほうが好きなタイプです。そういえば、別の研究仲間にもなぜ記者会見をやらないのか、運動なんだから、といわれたこともあります。いや、人任せにされましても。わたしにもできることとできないこと、得手不得手がありまして。
次は、2015年5月富山大学での最終報告会ですね。こちらは短い記事になります。
*1:赤澤久弥「日本図書館研究例会(第302回)報告」(2014年5月)、大図研京都ワンディセミナー「若手研究者の文献利用環境を巡る問題と図書館のニーズ」、togetterまとめ
*2:この分析に対して、文科省の「史学」のカテゴリーは実態に即しているわけではなく、ことさら減少を強調するのは間違っている、という批判がありました。つまり、「人文科学」の「その他」のカテゴリーの人数が増加しており、そちらに歴史学関係の院生が多く含まれているから、ということです。もちろんそれは承知しています。国立大学の学部学科再編にともない、歴史学を専攻する大学院生数が把握しにくくなりました。そうはいっても、「史学」というカテゴリー自体での学生数・志願者数の激減は無視できないと考えています。この点については、後日、改めて別稿で言及します。
*3:同書は光文社新書より全文公開されています。リンク先はこちら。
*4:元の文章「また、日本歴史学協会に若手研究者問題に取り組む委員会の設置を要求する気持ちを強くしたのは、「具体的な要求を」のコメントです。」を修正しました(2020年8月7日)。時系列を誤っていました。