浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

「家父長制を学ぶ」――1992年ドイツの妊娠中絶法改正をめぐって

 2020年6月25日、デジタルドイツ女性アーカイブのウェブサイトに「家父長制を学ぶ」というタイトルの論説が掲載されました。

 1992年6月25日から26日にかけて、ドイツ連邦議会は刑法第218条を賛成355票、反対283票をもって、ドイツ全土に効力をもつ規定として中絶自由化法案を可決しました。しかし、その11か月後に連邦憲法裁判所は、その法が基本法と合致しないと判断し、無効を宣言しました。

 東西ドイツ統一後の間もない頃のことです。ドイツ民主共和国、すなわち東ドイツでは12週までの妊娠中絶が認められていたのに対して、ドイツ連邦共和国、すなわち西ドイツでは妊娠中絶には許可事由規定という制約がありました。

 この妊娠中絶をめぐる東西ドイツの法規定の違いと統一後の規定の行方は高い関心が集まり、社会運動の重要なテーマになっていました。それだけに、1992年に連邦憲法裁判所が妊娠中絶に関する法改正を無効と宣言したことに、東ドイツの女性は大きな衝撃を受けたと指摘されています。

 西ドイツの人びとは、東ドイツの人びとに対して「民主主義を学べ」という態度でしたが、この問題は西ドイツの「家父長制」を学ぶ過程であったと、この論説は主張しています。

 連邦議会議員の8割が男性で、また同じく8割が西ドイツ出身であったことを指摘する節は興味深く読みました。また、この問題についての、東ドイツ出身の女性議員の怒りを紹介してくれています。

 このテーマについては、日本語でもいくつもの論考をインターネット上でみつけることができました。ひとまず、参考までに以下の論考のリンクを貼っておきます。