浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

「社会の自己理解が問題だ」――ドイツにおける人種主義について

 2020年7月2日、Jungle.World というジャーナルのウェブサイトに、ドイツにおける人種主義をめぐる論争を取り上げたインタビュー記事が掲載されました。タイトルとリンク先はこちらになります。

 「社会の自己理解」を問う内容です。インタビューを受けた人は、エアフルト大学の Patrice G. Poutrus 氏で、東ドイツ移民史研究を専門としています。

 インタビュワーは、リード文で、ドイツでも植民地主義軍国主義を美化する記念碑について論争になっており、それは人種主義に対する闘争の一つであると位置づけています。

 記事のなかで、Poutrus氏は撤去の対象となる遺物や改名の対象となる通りを示唆し、またそうした記念碑が19・20世紀ヨーロッパの排外主義的ナショナリズムを歴史的背景にもつことへの注意を喚起しています。

 Poutrus氏はエアフルトで "Decolonize Erfurt" という取り組みも進めているそうです。そして、植民地主義軍国主義を象徴する記念碑について、「なぜわたしたちはそれらを撤去するのか」と問うのではなく、「なぜわたしたちはそれらを維持したいと望むのか」と問いを変えて省察することを提言しています。

 また、東ドイツ時代の通りの改名についても論が及びます。ベルリン・ミッテ地区の「クララ・ツェトキン通り」が改名されたことは彼にとって理解できないと述べます。そして、公共空間で何を称揚するかは、社会の自己理解をめぐる一つの論争だ、と指摘しています。

 色々と示唆深い記事でした。