浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

移民女性の視点からドイツ再統一を再考する――1992年ロストック=リヒテンハーゲンでの人種主義的暴動について

 デジタルドイツ女性アーカイブのウェブサイトに「見境のない嫌悪」と題したレポートがアップされました。

 

 

 このレポートは、1992年8月22日に始まり、5日間に渡ってロストック=リヒテンハーゲンで起きた人種差別的な暴動について書かれたものです。移民女性支援のための全国連絡組織DaMigra(Dachverband der Migratinnenorganisation)とデジタルドイツ女性アーカイブが共同執筆者となっています*1

 かつての二国間協定によってドイツ民主共和国、すなわち東ドイツにやってきた「契約労働者」および留学生たちとDaMigraとの間で、2020年7月17日にライプツィヒで行われたインタビューが内容の中心です。

 ロストック=リヒテンハーゲンで発生したこの事件は、第二次世界大戦後にドイツで発生した人種主義的な暴動のなかで最大規模であったと説明されています。数百名もの暴動参加者が難民受け入れ施設やかつての契約労働者の住居に石や火炎瓶を投げつける映像が世界中に配信されました。警察はその様子を眺めるのみで止めなかったとのことです。

  このレポートでは、東ドイツ時代に隠れていた人種主義、「毎日ロストック」と題された統一後の日々、権利向上のための戦略という節が設けられ、最後に今後の展望が述べられています。重要な取り組みといえるでしょう。

 

【追記】2021年2月1日

 ローザ・ルクセンブルク財団のウェブサイトでこれに関連して、「移民およびユダヤ系住民の視点からの壁の崩壊」をテーマとした3人のインタビューが掲載されています。リンクはこちらです。

 

 

*1:関連する記事として、本ブログの「女性移民およびアフリカ系ディアスポラからみたドイツ再統一――デジタル・ドイツ女性アーカイブより」浅田進史研究室/歴史学、2020年11月27日)をご覧ください。