いよいよ今週末に開催されます。
「歴史学のオープンアクセス化を目指して――新型コロナ感染症対応下の日本歴史学協会の取り組み」というタイトルで報告します。その準備の過程で、参考にした、あるいは参考にしたかった資料を以下に紹介します。
歴史学のオープンアクセス化の動向について
歴史学の学術雑誌・学術書のオープンアクセス化の遅れについて言及しています。「公共財」という理解がオープンアクセスの考えの根幹だと思います。
図書館員が教えてくれるオープンアクセス
これを読んでようやく大枠が理解できた気がしました。すっきりしていて分かりやすいです。感謝です。とくに、「オフセット契約」と「フリッピングモデルのしくみ」の2つのスライドですっきり。正直、わたしにとっては秒単位で理解したい話なので、助かりました。
電子ジャーナルの価格高騰(シリアルズ・クライシス)をめぐる問題
最初に読むものとして分かりやすいと思います。
様々な立場からの論考が寄せられており、一部、機関リポジトリから公開されています。電子ジャーナルの価格高騰問題についての議論です。
世界の動向を踏まえた包括的な現状分析
パワーポイントの工夫と情報量がすごいです。学術雑誌価格高騰問題(シリアルズ・クライシス)の現状、エルゼビア問題、アカデミアの反発、ブダペスト・オープンアクセス・イニシティブ、MITなどの大学のOAポリシー例、日本のOAポリシー採択状況、日本の機関リポジトリの進展、OA出版の2つのモデル、エルゼビア社へのドイツの対応、日本でのAPC補助のあり方、などもりだくさん。ある程度、知識を持ってから、もう一度読むとまた理解が深まりました。
元医学図書館員が教えてくれるオープンアクセス情報
勉強になりますし、学生にも教えたいです。
2020年の科学技術・学術審議会での参考資料
歴史的経緯を踏まえたスライド資料です。ただスライドのみで、また専門用語について説明が乏しいので、あまり知識がない時点で読んでもよく分かりませんでした。
国立大学と電子ジャーナル問題
国立大学協会アンケート調査を基に作成された、図1「電子ジャーナル等の価格上昇が大学予算に与える影響」(「かなり深刻」=66%、「深刻」=28%)、と図2「構成員は必要な学術情報にアクセスできているか」(「困難を感じている」=43%、「非常に困難を感じている」=3%)が有益でした。
2000年代前半の電子ジャーナル入門
すでに、学術雑誌の価格高騰、すなわちシリアルズ・クライシスがもつ、その欧米と日本との状況の違いが解説されています。23頁以降に、2003年からの国際学術情報流通基盤整備事業についての説明があり、当時の状況を巨視的に振り返ることができました。29頁以降のオープンアクセスの定義・宣言も、オープンアクセス運動の流れの理解に役立ちました。
2010年時点の日本学術会議による提言
学術情報流通専門家の育成、電子ジャーナルへの平等なアクセスを実現するための購入モデルと交渉担当用の専門家集団、アーカイヴの整備、印刷媒体学術誌の収集と提供体制、専門家以外の知る権利の保障、日本語の学術誌も含めた国際的発信、学術情報発信共通プラットフォームなどを課題として挙げています。そして、アクセスと発信を支援する非営利組織の設置(図書館支援と学術出版団体支援)が提案されていました。
2010年頃の日本の学術雑誌の電子化状況
約10年前の調査で他分野の電子化状況との比較を考える際に有益でした。表8「特徴別の電子化状況」(3枚目)では、自然科学系が39.8%、社会科学系が58%、人文科学系が35.5%となっています。阻害要因について表9「編集刊行の問題点」(4枚目)も興味深いです。投稿の少なさ、出版費用の不足、雑誌編集の専門家の不在、電子ジャーナル化のための技術・費用不足、国際的な雑誌にするためのノウハウの不足などが挙げられています。
2015年時点のJ-StageとNDLサーチの現状と展望
新型コロナ感染症対応の一環として、日歴協の国立国会図書館ほかに宛てた公開要望書を作成した際に参考にしました。委員と一緒に要望書を作成していたときには、だいぶあやふやでしたが、いま読むと話についていけます!「J-Stageのコンテンツのライセンス表示」(スライド8枚目)、歴史系の学会に対応を求める際に利用できますね。ただ、率直にいって、論文を執筆する際にはJ-StageもNDLサーチもいまだ使い慣れていません。CiNii Articlesをベースに、J-StageとNDLサーチを加えている感じです。
そのほか
2005年時点でのサーヴェイ論文。
- 漢字文献情報処理研究会編『人文学と著作権問題――研究・教育のためのコンプライアンス』好文出版、2014年*1
基本文献。
*1:2021年2月1日に追記しました。