浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

歴史比較のなかのヴァイマル共和国と右翼の暴力――Luxemburg誌より

 2020年12月、ローザ・ルクセンブルク財団が発行する雑誌『ルクセンブルク――社会分析と左翼の実践』のウェブサイトに、ヴァイマル期の右翼の暴力と現在の右翼の暴力を歴史的に比較する論説が掲載されました。

 

 

 「ヴァイマル的環境によるものか――歴史比較のなかの右翼の暴力」と訳せるでしょうか。あまり日本語の訳文に「?」は使いたくないんですよね。好みですが。

 このリード文では、わたしたちの現在が右翼の暴力の急速な制限解除を経験しているといい、今日の危機への眼差しを鋭くするためには、ヴァイマル共和国の分析が役立つと主張しています。

 ヴァイマル共和国の基盤を掘り崩した要因として、4点を挙げています。

 

  • ヴァイマル共和国を敵視する義勇軍、さらに先行するファシスト的な準軍事大衆組織への拡大
  • 司法、公安部局、一部の政界による右翼の暴力に対する幅広い国家の寛容
  • 民主主義に敵対的な諸勢力による国家機関の浸透
  • 市民的・保守的諸勢力による暴力志向のファシズムとの同盟の受容

 

 最初の義勇軍については、2016年に原著、2017年にドイツ語版が出たマーク・ジョーンズの研究が取り上げられています。そこでは、解き放たれた右からの暴力を「ヴァイマル共和国の創建行為の一部」として描かれ、また1933年以後のファシズムの暴力への連続性として理解されていることが指摘されています。

 

 同書の英語版の書誌情報はこちら。

 

 

 ドイツ語版の書誌情報はこちら。さまざまなサイトで書評が掲載されていますが、ひとまず H-Soz-Kult に掲載された書評へのリンクを貼っておきます。

 

 

 義勇軍といえば、日本語の研究書として今井宏昌さんの本が挙げられますね。マーク・ジョーンズ氏の研究と同じ年に出版されました。