浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

歴史雑誌『労働-運動-歴史』の特集「労働者と他者」より

 Arbeit-Bewegung-Geschichte(労働-運動-歴史)という労働史を専門とするドイツ語の学術雑誌があります。その2021年第1号の特集が、「労働者と他者」です。目次はこちらからどうぞ。

 

 このなかで、とくに以下の論考に関心をもっています。第二インターナショナルにおける「クーリー議論」についての論考です。ここにメモしておきます。

 

  • Ole Merkel/Moritz Müller: Proletarier mancher Länder, vereinigt euch? Der schleichende Niedergang des Internationalismus in der „Kulidebatte“ der II. Sozialistischen Internationale (1883–1910), in: Arbeit - Bewegung - Geschichte, 20. Jg. Heft I, 2021.

 

 この特集についての解説は、左派のドイツ語オンライン・ジャーナル nd に掲載されています。

 

 

 冒頭では、1839年のヴィルヘルム・ヴァイトリングの言を引用しながら、国民よりも階級の連帯を訴えた初期社会主義のテーゼを紹介しています。

 そのうえで、1848年革命時にすでにヨーロッパの労働者階級が国民ごとに合同されたこと、そしてオーストリア社会主義者オットー・バウアーのような「文化的自治」構想を紹介しています。そして、国民的あるいは民族・文化的アイデンティティと階級アイデンティティの間の矛盾と対立をめぐる議論が資本主義社会の中心的な問題であったと位置づけ、労働者・労働者運動にとっての「他者」の問題を歴史的に振り返っています。