浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

ドイツの選挙権年齢の引き下げをめぐるオンライン史料展示――ドイツ連邦文書館より

 ドイツ連邦文書館のウェブサイトで、1970年代初頭のドイツ連邦共和国での選挙権年齢引き下げについてのヴァーチャル史料展示について知りました。

 

 

 「そうして法律が成立した――21歳から18歳へ・選挙年齢の引き下げ・1970-72年」という標題です。展示されている史料は68年学生運動の時期に関わるものが多いです。

 史料展示の解説文では、まず選挙権が民主主義の中心的な礎であることを確認しています。そのうえで、現在、ドイツ国籍をもつものと外国出身の「Mitbürgerinnen und Mitbürger(共同市民あるいは共生市民)」との間にある分断をめぐる選挙権が議論になっていると指摘されています。さらに、2000年代以降、グローバルな環境問題への若い世代の関心の高まりとともに、選挙権年齢を16歳まで引き下げるかについても合わせて焦点になっているとのことです。

 続いて、ヴァイマル共和国以降のドイツの選挙権の歴史が簡潔に描写されています。ヴァイマル憲法のもとで、女性を含む20歳以上のすべてのドイツ国籍者に選挙権が付与されました。ところが第二次世界大戦後の1949年以降、ドイツ連邦共和国、すなわち西ドイツでは、連邦議会選挙に参加する権利をもつ年齢は21歳に引き上げられました。

 しかし、1960年代に入り、18歳への選挙権年齢の引き下げが大きな議論の的になりました。その背景として、戦後生まれの世代が学生運動を展開し、親・祖父母世代のナチ犯罪の過去への向き合い方を批判したこと、さらにヴェトナム戦争と新たな緊急事態法に反対したことがあります。若い世代が政治参加の権利を要求したのです。この運動の成果として、1972年11月19日の連邦議会選挙には18歳以上の選挙権者が投票できるようになりました。

 現在の若者たちの環境保護運動と重ね合わせて、この歴史を振り返っているところが面白いです。

 

 関連して、ドイツ連邦政府閣議事録のオンライン版へのリンクも貼られています。*1