浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

ホロコーストのアフリカ系犠牲者追憶のためのベルリン「躓き石(Stolpersteine)」設置

 ドイツには道路など公共の場に、ホロコースト犠牲者を忘れず、追悼しつづけるための「躓きの石(Stolpersteine)」という取り組みがあります。

 2021年8月25日、Dekoloniale というドイツ語メーリングリストで、同月29日にベルリンで2名のアフリカ系犠牲者の「躓きの石」が設置されるという知らせを受け取りました。

 左派系のオンライン新聞サイト nd にも関連記事が掲載されています。

 

 

 Dekoloniale のメーリングリストでの説明によれば、過去20年に8500個以上の「躓きの石」が設置されてきましたが、アフリカの歴史を出自としてもつ人間のものはこれが最初とのことです。設置された場所と人物略歴は以下の通りです。

 

  • Martha Ndumbe(Max-Beer-Straße 24):1902年ベルリン生まれ。苦難の幼少期を経て、1920・30年代に売春婦を経験、何度も逮捕される。ナチ権力掌握後は「非社会的分子」として差別を受ける。比較的長い拘留期間ののち、1944年6月9日に女性用強制収容所ラーフェンスブリュックに移送され、翌年2月5日に同地で亡くなる。

 

  • Ferdinand James Allen(Torstraße 176-178):1898年ベルリン生まれ。幼少期については不明。第一次世界大戦期にイギリス国籍であったため、「敵性外国人」として父親とともに収容所生活を送る。てんかん症状がみられたことで、1920年代半ば以降、ヴ―ルガルテン市立保養所(Städtische Heil- und Pflegeanstalt Wuhlgarten)で入院生活。ナチ権力掌握後、強制断種され、1941年5月14日、T4作戦によってベルンブルク(Bernburg)で殺害される。

 

 ドイツでは公共空間に追悼と加害・負の歴史に向き合う、またその対象も広がっていることが分かります。

 

 ベルリンだけの取り組みではありませんが、ベルリンの「躓きの石」については、以下のウェブサイトをどうぞ。

 

 

【2021年9月20日追記】

 Dekolonialeのウェブサイトにもこの「躓きの石」の設置が掲載されています。リンクはこちら。