浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

オーラル・ヒストリー協会のハラスメント・ポリシーについて

 学会のハラスメント対策について勉強しています。

 今回は Oral History Association (OHA) のハラスメント・ポリシーについて、そのポイントを確認していきます。

 

 

 まず構成についてです。

 

  • セクシュアル・ハラスメント
  • そのほかの非合法的なハラスメントあるいは行動
  • ポリシーの範囲
  • 非公式・公式の申し立ての手続
  • 教育への関与

 

 次に、それぞれの項目を確認しましょう。

 

 まず、セクシュアル・ハラスメントです。それは「一般に、嫌がられる性的接近、性的嗜好への要求、およびそのほかの性的な性質をもつ言動」と定義されており、さらに以下の4点が指摘されています。

 

  1. その行為への服従が明示的であれ、暗示的であれ、雇用の条件であるもの
  2. その行為への個人的な反応が個人に影響を及ぼす雇用決定の基盤として利用されること
  3. その行為が個人の仕事のパフォーマンスを阻害する目的や影響をもつこと
  4. その行為が脅迫的、敵対的、攻撃的な労働環境を生み出す目的や影響をもつこと

 

 また、雇用者、メンバー、ボランティア、参加者はセクハラ、あるいは求めていない・嫌がる性的な申し出に従属されてはならないし、またそうした人々が性的な性質をもつ「協力」に依存することで利益が得られると信じるように導いてはならないと記載されています。

 さらに、セクハラは性的嗜好への要求に限られるものではないとして、7点の例が挙げられています。

 

  1. 性的指向をもつ言葉での「からかい」、「いじめ」、あるいはジョーク
  2. 繰り返しの性的な「戯れ」、接近、言い寄り
  3. 性的な性質をもつ連続的、あるいは度々の虐待
  4. 個人、あるいは彼・彼女の容姿についての露骨な、あるいは侮蔑的なコメント
  5. 性を示唆するモノや画像のひけらかし
  6. 性的行動への陰湿な圧力
  7. 不適切な身体的接触

 

 次に、そのほかの非合法なハラスメントあるいは行動についてです。とくに、人種、肌の色、宗教、国籍、年齢、婚姻上の地位、ジェンダーアイデンティティ、あるいは障がいを挙げ、ほかの根拠に基づくハラスメントが禁じられる、と明記されています。そのハラスメント行為には、以下の6点が挙げられています。

 

  1. ジョーク、あるいは言葉での「からかい」ないし「いじめ」
  2. 暴言および罵倒
  3. 侮辱的コメント
  4. 攻撃的なモノおよび図像のひけらかし
  5. わいせつ、あるいはみだらな性質の行為あるいはコメント
  6. 個人が脅迫、攻撃、強制、あるいは脅威にさらされたと合理的にみなされる行為

 

 続いて、ポリシーの範囲です。

 これは性的およびそのほかの性質のハラスメントを禁止するもので、雇用者・会員・ボランティアの関係に限定されず、参加者および業者にも拡張されると指摘します。

 そのうえで、このポリシーに述べられたどのようなハラスメントも直接、年次総会で呼ばれた専門委員、OHA評議員、そのほか共同執行理事長に報告できるものと記載されています。

 さらに、OHAはあらゆる申し立てに十分に調査し、最大限に機密性を維持すると述べます。そのうえで、ハラスメントに関与した者に対して、以下の3点の処分があるといいます。

 

  1. 書面での懲戒あるいは譴責
  2. 辞任勧告
  3. OHA内での地位からの除外
  4. 個人の会員資格、雇用、契約関係、および/あるいは現在および/あるいは将来のOHAが組織・主催・共済するイベントへの参加の停止ないし打ち切り

 

 次に、申し立ての手続きについてです。

 OHAが年次総会の間に申し立て人がコンタクトできるように会員からオンブズパーソンを任命し、会議の間に時間を設定し、ハラスメントや専門家にふさわしくない振る舞いについての申し立てを受け取る、というものです。

 まず、ハラスメント被害にあったと自身が思う会員や参加者は、書面、電子メールほかの手段でオンブズパーソンに申し立てを始めることができるそうです。

 次に、その申し立てを受けたオンブズパーソンは調査を開始します。

 それは非公式と公式の二つの選択肢があり、非公式の解決は、申し立て人が内密・間接的にハラスメント行為をやめさせることを望むものです。公式の調査は、申し立て人が望んだ場合に行われます。ただし、非公式の解決に公式の調査を排除するものではないと注意書きがあります。

 また、オンブズパーソンは共同理事長とともに、著しく破壊的・暴力的で、会の通常の事業を阻害する者には会から除外する一方的な権力を与えられています。

 公式調査を望む場合には、オンブズパーソンへの秘密の書面上の要求によって開始されますが、共同理事長はオンブズパーソンと協力して調査を監督し、当事者双方から書状を要請するとのことです。

 もし申し立て人が評議会あるいは理事会事務局スタッフの個人を告発する場合には、オンブズパーソンには議長によって認められた品行方正な会員2名が調査の補佐に就きます。そして、すべての資料が執行委員会に提出され、ポリシーの範囲で指示されたふさわしい裁可が下されます。この過程で機密性は可能なかぎり最大限維持されると明記されています。

 

 最後に、ハラスメントへの啓発活動についてです。ウェブサイトでポリシーを説明し、教材が提供されると明記されています。そしてこのポリシーは会議プログラムに挿入され、年次総会の参加登録の開始時に配布されるようです。

 

 アメリ社会学会のメンバーが作成した研修ビデオへのリンクが、許諾を得たうえで貼られています。こちらの研修ビデオは YouTube にアップされています。