浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

ドイツの1933年1月30日を語る本――ナチズムに抗する記憶の古典について

 2023年2月1日、ドイツ語圏の現代史系ウェブサイト、Geschichte der Gegenwart(現在の歴史)に、ドイツの1933年1月30日、つまりヒンデンブルクによってヒトラーが首相に任命されたナチによる権力掌握の日の記憶にかかわる2冊の基本文献を紹介する論説が掲載されました。

 

 

 紹介された本は、ゼバスティアン・ハフナーの『あるドイツ人の歴史――回想、1914-1933年』(Sebastian Haffner: Geschichte eines Deutschen. Die Erinnerungen 1914-1933, Stuttgart: Deutsche Verl.-Anst., 2000、中村牧子訳『ナチスとのわが闘争――あるドイツ人の回想、1914-1933』東洋書林、2022年)とヤン・ペーターゼンの『私たちの街路で――ファシズム・ドイツの心臓部でかかれたある記録』(Jan Petersen: Unsere Straße. Eine Chronie. Geschrieben im Herzen des faschistischen Deutschlands, Prag 1936、長尾正良訳『われらの街――ファシズム・ドイツの心臓部での記録』新日本出版社、1964年)の2冊です。

 

 ハフナーの本は、「普通の」の人びとによる、日常の小さな、目立たない行動とその決定が独裁を作り上げていく過程を明らかにするものと評価されています。そして、新しいソーシャルメディアの影響を受ける現代社会において「新しい1933年」の登場に警句を鳴らすことに説得力を与えるという点で、現代的な意義があると述べています。

 ペーターゼンの本については、現在では忘れられていると評されつつも、ハフナーのそれと同様に、読まれるべき一冊として挙げられています。なんといっても、同書は1930年代に執筆され、かつベストセラーになったことが強調されています。そのうえで、彼の経歴と同書の内容が紹介されています。