浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

2023年11月時点での中東紛争についてのドイツ世論調査

 ドイツ連邦政府イスラエル政策と今回のガザ紛争へのドイツ世論の反応について、何らかのデータを知りたいと思いまして、色々と検索していたら、2023年11月23日に公表されたアレンスバッハ世論調査研究所(Institut für Demoskopie Allensbach)の「中東紛争への割れた反応(Gespaltene Reaktionen auf den Nahost-Konflikt)」という報告書を知りました。

 ちなみに、"Nahost"は、直訳すれば「近東」ですが、日本であまり使われなくなっていると思いまして、「中東」をあてました。また、この結果はフランクフルター・アルゲマイネ紙上で同日公表されています。

 

 

 この世論調査は、2023年11月3日から16日にかけて、1047人にサンプリングによるインタビュー形式で行われました。

 これによれば、76%がイスラエル・ガザ戦争に憂慮しているものの、ハマスの「野蛮な攻撃」に対するイスラエルの対応について一致したコンセンサスはない、という結論でした。イスラエルの対応への支持は限定的であり、世論はまったく割れているとのことです。

 イスラエルによるガザへの侵攻を支持する割合は35%であり、それに対して、38%がパレスチナ住民の犠牲者を回避する慎重な行動を支持しており、その傾向は女性と東ドイツ地域に比較的高くみられるとのことです。

 また、この報告書では、2006年のイスラエルによるレバノン侵攻とも比較しており、このときにはレバノンヒズボラによる繰り返されるロケット攻撃に対して、イスラエルの軍事侵攻を支持する割合は21%にすぎなかったことが指摘されています。むしろ、53%は攻撃すべきではなく、それによってリスクを拡大すべきではないという意見でした。

 

 この報告書についてのメディアの反応も挙げておきます。

 

 

 こちらの記事によれば、この世論調査の結果のうち、以下の点が指摘されています。

 

  • ドイツがこの紛争に介入すべきではないと回答する割合は、43%にのぼった。
  • ナチズムの過去によってイスラエルに特別な責任を担うべき、という見方を肯定する回答は、34%にすぎなかった。
  • ショルツ首相のイスラエル全面支持の政策を支持する割合は、31%にとどまった。
  • パレスチナ民間人の犠牲を防ぐようにイスラエルを説得すべきと回答した割合は、38%にのぼった。
  • ショルツ政権は対立する両者の仲介を追求すべきと回答する割合は、57%にのぼった。
  • 回答者の約38%がイスラエルは「アラブ近隣諸国への理解があまりに乏し」く、また「不当に領土占領」していると回答している。
  • ドイツ政府のイスラエルへの軍事支援について、大多数が弾薬・武器の提供に反対しており、わずかに8%が武器の提供を支持するのみで、連邦軍の派遣による支援を支持するものは3%にすぎなかった。

 

 記事のタイトルのとおり、昨年11月の時点で、ドイツ連邦政府イスラエル全面支持の政策は、世論調査の結果によれば、世論に支持されていない、といえそうです。

 

【2024年7月10日追記】

 同じく2023年11月2日に、ARD(ドイツ公共放送連盟、第1テレビ)が中東情勢への世論調査の結果を公表していました。リンクはこちら。

 

 

 この記事によれば、10月7日のハマスによる襲撃事件以降、中東情勢について、回答者の74%がとても大きく、あるいは大きく動揺していました。また、誘拐された人に対して回答者の81%、パレスチナ民間人に対しては72%、イスラエルの民間人に対しては65%が深刻に憂慮しているとのことです。さらに、回答者の78%が近隣諸国への紛争拡大を恐れていました。

 イスラエルの軍事的対応については、こちらの世論調査でも評価は割れています。適切と回答した割合は35%、不十分と回答したそれは8%で、合わせて43%がイスラエルの軍事的対応を支持、もしくはより強硬に対応すべきと考えていました。その一方で、41%が行き過ぎと回答しており、拮抗しています。

 ただし、イスラエルハマスに対する軍事行動が、パレスチナ民間人を合わせて犠牲にしても正当化できるか、という質問には、61%が否定していました。ただし、肯定する回答も25%にのぼっています。

 現在のガザ情勢の主な責任についての質問では、ハマスに「全く、完全に」責任があると回答した割合は45%、「やや」責任があると回答した割合は32%で、77%がハマスに責任があると回答しています。これに対して、イスラエルに「全く、完全に」責任があると回答した割合は15%にとどまりますが、「やや」責任があるとの回答も42%にのぼり、過半数を超える57%がイスラエルにも責任があると考えています。

 また、反ユダヤ主義がドイツで広がっているか、という回答については、52%が拡大していると回答し、37%が否定しています。この回答を政党支持別にみると、緑の党が71%、SPDが64%、CDU・CSUと左翼党がそれぞれ56%で、AfDは40%と差がついたとのことです。

 この世論調査はドイツ在住の有権者に、10月30日から11月1日にかけて、無作為の電話およびオンライン形式によるものです。回答者数は1314人です。