浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

21世紀のグローバルな記憶を議論するドイツ語新刊書について

 研究メモです。

 2023年10月に、21世紀におけるグローバルな記憶文化を議論する新刊書が出ました。出版社のウェブサイトからの紹介ページをリンクしておきます。

 

 

 著者のミルヤム・ツァドフさんは、ミュンヘンのナチ記録資料センター所長です。

 出版社による本書の紹介文を要約します。

 

 今日の各地の社会では、戦争と差別についての様々な経験によって、ときに数世代にもわたって刻印された経歴をもつ人びとが共生している。著者は歴史を過去から現在の問いに答える力と理解する。ここでは世界中から、多様な形で暴力の歴史への記憶が呼び起こされ、あるいは忘却される事例が集められている。たとえば、イタリアでのユダヤ系住民の強制移送、日本での強制性売買、ヨハネスブルクでのホロコースト植民地主義の犠牲者である。そのために、その生のなかで歴史によって暴力の痕跡が残されている、すべての人間を含むグローバルな記憶文化が結びつけられている。

 

 ローザ・ルクセンブルク財団のウェブサイトで書評が出ています。

 

 

ドイツ語圏におけるユダヤ史――Clio-Guideより

 ミリアム・リュールップさんによる「ドイツ語圏におけるユダヤ史」という論説を見つけました。こちらは、「クリオ・ガイド(Clio Guide)」という歴史学向けのデジタル資料ハンドブックの第3改訂新版に掲載されたものです。

 

 

 デジタル資料を紹介するしっかりした論説で参考になりそうです。

 

 このクリオ・ガイドには、環境史、メディア史、企業史、技術史、歴史と文学、近代ヨーロッパ宗教史、近代都市史、経済史がアップされています(一部は2018年版)。

 

 

 そのほか、まだ未掲載ですが、歴史教育軍事史、法制史、パブリック・ヒストリー、知の歴史の項目が立てられています。

 

ジェンダー・ペイ・ギャップの歴史と現在についてのドイツ語論文集

 研究メモです。

 2023年11月、ディーツ出版社より、ジェンダー・ペイ・ギャップの歴史と現在についての論文集が出版されました。

 

 

 研究だけではなく、講義の準備などに使えそうです。

 

左翼、近東紛争、反ユダヤ主義についての解説付き文献目録――ローザ・ルクセンブルク財団ウェブサイトより

 2014年にローザ・ルクセンブルク財団の 「分析(Analysen)」 シリーズの一冊として、ペーター・ウルリヒさんによる『左翼、近東紛争、反ユダヤ主義――一つの論争を通じた道案内』という解説つき文献目録の第3版が公刊されました。オンライン版のみでオープンアクセスです。

 

 

 序文冒頭では、ドイツ左翼にとって、近東と反ユダヤ主義の衝突は、きわめて重大な意味と爆発力をもつと指摘されています。

 序文の後に続く目次を紹介しておきます。

 

  1. Geschichte der Arbeiter/innenbewegung und des Sozialismus([男女の]労働者運動と社会主義の歴史)
  2. Die DDRドイツ民主共和国
  3. Die (westdeutsche) Linke([西ドイツの]左翼)
  4. Diskurskontext(e)([諸々の]言説文脈)
  5. Debatten(討論)

 

【2024年3月5日追記】

 関連するローザ・ルクセンブルク財団のまとめサイトへのリンクを貼っておきます。

 

 

ホロコーストと植民地主義をめぐるシンポジウム

 研究メモです。

 2023年11月23日に社団法人エーリヒ=ツァイガー=ハウスが "Holocaust und Kolonialismus – Deutungskämpfe um das Erinnern(ホロコースト植民地主義――記憶をめぐる解釈闘争)"という題目でシンポジウムを開催しました。

 

 

 冒頭の趣旨文には、植民地犯罪とホロコーストの連続性と比較可能性をめぐる幅広い記憶政治上の議論を反映した催しであることが記されています。「歴史家論争2.0」の文脈と「多方向的記憶」をめぐる論争を対象としたものです。