浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

戦間期ドイツにおける労働者階級出身の児童向け社会主義教育組織を振り返る記事――フリードリヒ・エーベルト財団ブログより

 ドイツ社会民主党系のフリードリヒ・エーベルト財団ブログで、イルメーラ・ディートリヒスさんによる「子どもの友100年――遊び・楽しみ・社会主義」というタイトルのブログ記事が掲載されました。

 

 

 冒頭の段落によれば、1923年11月13日は、「子どもの友全国労働共同体(Reichsarbeitsgemeinschaft der Kinderfreude)」が設立された日であり、1933年まで社会主義的教育組織として、多数の労働者階級出身の児童を組織したとのことです。そのピークは、ナチ党による活動禁止直前の1932年であり、12万人の児童を数え、さらに1万人の支援者と7万人の親が加入する父母連合と連携していました。「子どもの友」は社会民主党の連帯共同体に組み込まれており、いくつかの社会民主党系の大きな組織がその設立に参加し、全国執行部に席をもっていたと説明されています。

 写真もいくつか掲載され、また参考文献リストもあります。ドイツの教育史と労働史に関心がある人に役立つ記事だと思います。

 

ジェンダーと革命――2023年10月19日開催の討論動画より

 2023年10月18-20日、ベルリンで "1923. Sattelzeit der Revolution – Umbrüche in Politik, Kultur und radikaler Gesellschaftskritik"(1923年――革命のはざま期 政治・文化・急進的社会批判における諸転換)という会議が開催されました。その企画の一部として「性と革命」というタイトルで行われた、ルイーゼ・マイアーとクラウス・テーヴェライトによる討論の動画が、12月4日にローザ・ルクセンブルク財団のYouTubeチャンネルにアップされました。

 

 

 この企画の趣旨などは、こちらから読むことができます。

 

 

 企画したパトリック・アイデン=オッフェさんによる趣旨文の冒頭では、1923年がドイツ史およびヨーロッパ史の「運命の」、そして「転換」の年であったと指摘されています。混沌としながらも、異例なほどに事件が起きた年であると。例として、ベルギーおよびフランスの軍隊によるルール地域の占領、ハイパー・インフレーション、それによる深刻な国内の二極化と不安定化が言及されています。

 2018年にMRX Maschine(マルクス・マシーン)を発表したルイーゼ・マイアー(Luise Meier)さんも、1977・78年にMännerphantasien(男たちの妄想)を発表したクラウス・テーヴェライト(KlausTheweleit)さんもフリーの著述家です。

 

ミュンヘン一揆(ヒトラー・クーデタ)100年を振り返るnd紙の記事

 コメント準備やら学会対応やらで、だいぶ更新に間隔が空いてしまいました。こちらは講義メモです。

 

 日本語では、ミュンヘン一揆あるいはヒトラー一揆と訳される、Hitler Putschは直訳すれば「ヒトラー・クーデタ」となりますね。ドイツ語圏では、ミュンヘンをつけると、Hitlerputsch von München といった表記が見られます。

 

 ともあれ、昨年、つまり2023年11月3日、ドイツ語圏の左派系ジャーナル、nd紙に、この出来事から100年目ということで「ヒトラー・クーデタ1923年――発煙弾と神話」と題した記事が掲載されました。以下にリンクを貼っておきます。

 

 

 リード文では、「ヒトラー・クーデタは決してヒトラーのクーデタではなかった。100年前に多様な保守的傾向をもつ民主主義および共和国の敵が一つになった。」と説明されています。写真つきで経緯が詳述されています。

 

 日本語での「ミュンヘン一揆」というタイトルですと、ヒトラーそのものが明示されていませんが、その一方で「ヒトラー・クーデタ」ですと、上記の記事の問題提起、つまり「ヒトラーのクーデタ」ではなく、ヴァイマル共和国に敵対する様々な保守勢力が関与したことが見えにくいという問いがあまり意味をなさなくなりますね。

 読了目安は9分とのことです。

 

アントニオ・ネグリ――ローザ・ルクセンブルク財団のYouTubeチャンネルより

 日本でも『〈帝国〉』や『マルティチュード』の翻訳書で知られる、2023年12月15日にアントニオ・ネグリさんが逝去されたとの報道に触れました。大学院生のときに『〈帝国〉』をゼミで発表した記憶があります。

 ローザ・ルクセンブルク財団のSNSで、同財団のYouTubeチャンネルで2009年11月24日に公開された彼の講演動画があることを知りました。リンクを貼っておきます。

 

 

東ベルリンの環境図書館について

 東ベルリンにある環境図書館(Umwelt-Bibliothek)のホームぺージを知りました。

 

 

 この図書館は、1986年に設立されたとのことです。それから12年の間、この図書館は、左派のドイツ民主共和国反対派の待ち合わせ場所、図書館、居酒屋、ギャラリー、資料室、反体制的な集会所になったそうです。このホームぺージはその歴史の解説と記念するものです。