浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

「極限状況のなかの生活について」――テレージエンシュタットに関するインタビュー記事

 Geschichte der Gegenwart(現在の歴史)というウェブサイトがあります。

 

 

 現代史を中心としたウェブ上のドイツ語公共討論空間のようです。

 

 2021年4月25日、そのサイトにナチ・ドイツによるユダヤ系の人びとを強制収容した「ゲットー」施設、テレージエンシュタットをめぐる二人の歴史家による討論記録が公開されました。

 タイトルは、「極限状況のなかの生について――テレージエンシュタットにおける社会は何だったのか」です。

 

 

 この討論は以下の本の出版を機に企画されたものです。

 

 

「ハンブルクの(ポスト・)植民地的遺産」について

 ハンブルク大学のホームページ内に、「ハンブルクの(ポスト・)植民地的遺産」というタイトルのブログがあります。

 

 

 最新の投稿は、ドイツ政府が現在のナミビアを植民地支配していた際のヘレロ・ナマへのジェノサイドを認め、謝罪し、11億ユーロの「再建と発展のための」開発援助を表明したことへのコメントです。

 

 

 この5月28日政府表明についてのドイツェ・ヴェレの記事へのリンクはこちらです。かなりしっかりした記事です。

 

 ほかにも色々なコメントやインタビュー、声明、シンポジウム告知などが掲載されています。わたしの専門に関わるところでは、義和団戦争関連があります。

 

 

【2024年4月3日追記】

 2021年6月1日にローザ・ルクセンブルク財団ウェブサイトで、ドイツとナミビア間の「和解協定」を批判する記事が掲載されていました。ここにリンクを貼っておきます。

 

 

Archiv für Sozialgeschichte 第60巻(2020年)について

 ドイツ社会民主党系のフリードリヒ・エーベルト財団が刊行する『社会史アルヒーフ(Archiv für Sozialgeschichte)』の第60巻が2020年に刊行されました。「連帯」が特集テーマでして、タイトルを日本語で仮訳すれば、「『インターナショナルに誓って・・・』か――連帯の実践と思想」となります。

 

 

 12本の論考が掲載されていますが、今のところ以下の1本の論考がPDFで無料ダウンロードできます。

 

  • Dietmar Süß/Meik Woyke: Der Geruch von Weihrauch und Achselschweiß? Überlegungen zu einer Geschichte der Solidarität

 

 そのほか、「資料・分析・批判」という項目では、「ナショナリズムの現代史」というタイトルの論考が無料ダウンロードできます。

 

  • Dominik Rigoll/Yves Müller: Zeitgeschichte des Nationalismus. Für eine Historisierung von Nationalsozialismus und Rechtsradikalismus als politische Nationalismen

 最後に、研究報告およびいくつかの書籍を合わせて書評した寄稿については、以下の論考が無料ダウンロードできます。

 

  • Zoé Kergomard: Moments of Democratic Evaluation? Literature Review on the History of Elections and Election Campaigns in Western Europe (19th–21th Centuries)

 そのほかにわたしが気になる論題は以下のものです。ここにメモしておきます。

 

連帯の概念史にかんするもの(特集論文)

  • Hermann-Josef Große Kracht: Soziale Tatsache, Grundwert oder Tugend? Zur Begriffsgeschichte der Solidarität im 19. und 20. Jahrhundert
  • Marc Drobot: Vagheit als Funktion. Begriffsgeschichtliche Anmerkungen zu Genese und Gegenwart des Solidaritätsbegriffs

 

植民地主義にかかわるもの(特集論文)

  • Dominik Rigoll: Kommunistische Solidaritätspolitik im demokratischen, nationalistischen und kolonialen Frankreich 1920–2010
  • Sebastian Garbe: Solidarität neu verweben. Dekoloniale Herausforderungen der Mapuche-Bewegung für internationale Solidarität im 21. Jahrhundert

 

ナチ研究動向論文

  • Michael Schneider: Kontroversen um die ›Volksgemeinschaft‹. Zu neueren Arbeiten über die Gesellschaft des ›Dritten Reichs‹

 

アナーキズム研究動向論文

  • Fabian Lemmes: Neue Wege der historischen Anarchismusforschung (19.–21. Jahrhundert). Teil 1: Grundlagen und Konturen eines expandierenden Forschungsfelds

 

「アフリカからロシアへ」――ユルゲン・ツィンメラー氏のシュピーゲル誌寄稿論文について

  2021年4月14日、シュピーゲル誌のウェブサイトでの特集「ドイツ植民地史」に、ユルゲン・ツィンメラー氏による寄稿論文「アフリカからロシアへ」が掲載されました。

 

 

 記事は、「ドイツの植民地主義的野心は1919年ではなく、1945年にようやく終えた。なぜなら東ヨーロッパでの征服・絶滅戦争もまたこの殺戮の伝統にあるのは疑いないからである。」というリード文から始まります。

 この記事では、植民地主義的な思想、「人種戦争」としての性格、「人種国家」としての支配体制の構築、絶滅戦争・大量虐殺といった、ドイツ植民地主義とナチズムの類似性が説明されています。

 これまでも、ツィンメラー氏は20世紀最初のジェノサイドと呼ばれるヘレロ・ナマ戦争について研究されており、ナチ・ドイツによる東部戦線の戦争遂行との類似性について論じてきました。一般向けに、これまでの主張を要約したものといえるでしょう。

 結論では、社会があらかじめ植民地主義的な特質をもっていたことは、ナチズムが行ったことに多くの人が進んで関与したことを理解する助けになると述べています。そして、人間を軽視するプロジェクトには植民地主義的な伝統があり、東欧・ロシアでの征服計画に関与することに、反ユダヤ主義者である必要はなかったと主張します。ただ、それに協力することで、またホロコーストにも協力することになったといいます。

 彼は、このような植民地主義批判の視点を、ポストコロニアル的な視点と表現します。そして、その視点をドイツ史に組み込むことで、アウシュヴィッツと「通常の」ドイツ史の間にある「防火壁」を横断でき、現在の人種主義によりよい理解が得られると締めくくっています。

 

トルコからの「ガストアルバイター」女性について――Deutschlandfunk Kulturより

 2021年4月12日、「ドイチュラントフンク(Deutschlandfunk)」というドイツのラジオ放送局のウェブサイトに、「故郷と郷愁のはざまで」というタイトルで、トルコからの出稼ぎ労働者(ガストアルバイター)の女性に焦点をあてた記事が掲載されました。

 

 

 放送の録音へのリンクもあります。3人の子どもをトルコに残してドイツに渡った女性のインタビューから始まります。写真も豊富で、参考になります。