浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

「アフリカからロシアへ」――ユルゲン・ツィンメラー氏のシュピーゲル誌寄稿論文について

  2021年4月14日、シュピーゲル誌のウェブサイトでの特集「ドイツ植民地史」に、ユルゲン・ツィンメラー氏による寄稿論文「アフリカからロシアへ」が掲載されました。

 

 

 記事は、「ドイツの植民地主義的野心は1919年ではなく、1945年にようやく終えた。なぜなら東ヨーロッパでの征服・絶滅戦争もまたこの殺戮の伝統にあるのは疑いないからである。」というリード文から始まります。

 この記事では、植民地主義的な思想、「人種戦争」としての性格、「人種国家」としての支配体制の構築、絶滅戦争・大量虐殺といった、ドイツ植民地主義とナチズムの類似性が説明されています。

 これまでも、ツィンメラー氏は20世紀最初のジェノサイドと呼ばれるヘレロ・ナマ戦争について研究されており、ナチ・ドイツによる東部戦線の戦争遂行との類似性について論じてきました。一般向けに、これまでの主張を要約したものといえるでしょう。

 結論では、社会があらかじめ植民地主義的な特質をもっていたことは、ナチズムが行ったことに多くの人が進んで関与したことを理解する助けになると述べています。そして、人間を軽視するプロジェクトには植民地主義的な伝統があり、東欧・ロシアでの征服計画に関与することに、反ユダヤ主義者である必要はなかったと主張します。ただ、それに協力することで、またホロコーストにも協力することになったといいます。

 彼は、このような植民地主義批判の視点を、ポストコロニアル的な視点と表現します。そして、その視点をドイツ史に組み込むことで、アウシュヴィッツと「通常の」ドイツ史の間にある「防火壁」を横断でき、現在の人種主義によりよい理解が得られると締めくくっています。