浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

国際連盟――ドイツ連邦文書館ヴァーチャル展示より

 ドイツ連邦文書館のヴァーチャル展示として、同館ホームページの「ヴァイマル共和国100年」特設サイトに「国際連盟――政治的失敗とグローバル知識社会の結節点の設立」が掲載されました。リンク先はこちらです。

 

 

 解説は、ライプツィヒ大学のヨーナターン・フォーゲス(Jonathan Voges)さんによる寄稿です。

 ドイツ連邦文書館所蔵の関連史料など、いくつかのサイトへのダイレクト・リンクもあります。

 

  • Direktlink zur Serie "Völkerbund" im Bestand R 601 Präsidialkanzlei
  • Direktlink zum Aktenband R 3101/20823 mit Materialen zum Völkerbund 1927
  • Direktlink zum Aktenband R 1501/105722
  • Beitrag zum Völkerbund im Archivportal-D
  • Korrespondenz des Internationalen Institus für geistige Zusammenarbeit mit Albert Einstein, 1925 - 1933 (Unesco-Archiv)

 

いかにバンドン会議の精神を現在のために維持できるか――ローザ・ルクセンブルク財団より

 先日、ここのブログでバンドン会議について触れましたので、ちょっと前になりますが、2020年2月にローザ・ルクセンブルク財団ウェブサイトに掲載された、バンドン会議をテーマとした論考へのリンクを貼っておきます。

 

 

 タイトルは「非同盟インターナショナリズムの解放的遺産――わたしたちはバンドン精神について、現在のために何を維持できるか」という意味です。著者はクロアチアザグレブ経済学研究所の上級研究員です。

 

 ドイツ語で非同盟諸国運動は Blockfreien-Bewegung 、略記号は BfB なんですね。

 

 以下、記事の冒頭部分を紹介します。

 

 非同盟運動は、アゼルバイジャンのバクーで2019年に第18回首脳会談が開催されたように、今日でも存続していますが、それでも1989年の冷戦終焉とともに、重要性を失った、と指摘されています。また、1991年以降のユーゴ紛争の結果、非同盟運動を創始した最も重要な国の一つであるユーゴスラヴィアが解体され、内部に紛争を抱えた国民国家に分裂したことが、その要因として挙げられています。そして、旧ユーゴスラヴィア地域では、意識的にこの非同盟運動が、とくに政策レベルで忘れようとしている、と述べます。

 その一方で、研究者や活動家の間では、ふたたびこの非同盟運動への関心が強まっていると言います。なぜなら、それが当時の新自由主義的プログラムとは異なる、もう一つのグローバル化の形態であったからだ、と主張しています。

 そのうえで、この論説では、この運動が「交渉技術と生存戦略」であって、そこにどれほど新左翼理論と政治議論に思われるような議論、たとえばポストコロニアリズム、反人種主義、インターセクショナリティ、あるいはグローバルな社会的公正のような言説のようなものを再活性化させたことに重きが置かれています。

 

 見出しは以下の通りです。

 

  • Dekolonialismus und Antirassismus(脱植民地主義と反人種主義)
  • Globale sozioökonomische Gerechtigkeit(グローバルな社会経済的公正)
  • Für eine friedliche Welt ohne Atomwaffen(核兵器のない平和な世界のために)
  • Reform der Vereinten Nationen(国際連合の改革)
  • Blockfreiheit von unten: Kulturell Austauschprozesse(下からの非同盟主義――文化的な交流過程)
  • Multilateralismus, wohin des Weges?(多文化主義はどこに行くのか)

 

 

第一次世界大戦のドイツ賠償金支払いに関する会議について――Archivportal-Dより

 ドイツ文書館総合ポータルサイトArchivportal-D に、 "Im Blickpunkt(視点のなかで)" というオンライン史料展示企画があります。

 

 2022年4月1日、その企画の一環として、第一次世界大戦終結させたヴェルサイユ講和条約に定められたドイツ賠償金の支払いに関して、1920-1922年に開催された会議をテーマとした論説が掲載されました。

 

 

 文章そのものは、ドイツ連邦文書館のヴァイマル共和国オンライン・ポータルから引用されたものです。

 

 後のほうに、関連史料へのリンクと史料検索の手引きもあります。

 

「グローバルなオルタナティヴとしての第三世界」――analyse & kritikより

 2022年4月12日、パリのドイツ歴史研究所のアフリカ現代史研究者であるローベルト・ハインツェさんによる「グローバルなオルタナティヴとしての第三世界」というタイトルの論説が、ak(analyse & kritik)という左派系ドイツ語新聞ウェブサイトに掲載されました。

 

 

 冒頭で、ロシアによるウクライナ攻撃が始まった直後、ドネツクとルガンスクの二つの共和国を承認するロシアの決定について、ケニア国連代表マーティン・キマニ氏が語った演説に触れています。

 その演説は、国民の自己決定についての二つのモデルを対置するものでした。その一つはロシアが求める民族モデルであり、それをキマニ氏は非難しています。もう一つは「実際的な」モデルであり、それは、彼の見方によれば、アフリカ諸国が脱植民地化に際して受け入れたもので、戦争を避けるために、ヨーロッパ列強に強いられた境界線を承認し、大陸レベルで同時に経済・政治・法的な統合を目指すというものです。

 実際には、帝国主義時代にヨーロッパ列強が行った「アフリカ分割」は、脱植民地化後のアフリカでの紛争の要因になったと思われますが、もちろんそれを知りつつも、上のように述べることで、ケニア国連代表は、アフリカ統一組織(OAU)およびその後継であるアフリカ連合AU)の元来の目標と、ロシアによるウクライナ侵攻に対する非難を結びつけた、と著者は論じています。

 ハインツェさんは、ケニアも数年来、反テロ行為の名目でソマリアスーダンへの境界を侵犯していることを指摘しつつ、ケニアのジャーナリスト Patrick Gathara さんによる批判、つまりアフリカ連合ははじめからアフリカ人エリートのプロジェクトであり、実際の脱植民地化よりも、植民地状況の継続性に関心がある、という側面にも触れています。

 こうした前置きのうえで、「第三世界」論の現在地が検討されています。見出しは、以下の通りです。

 

  • Den antikolonialen Moment verpasst(逃した反植民地的機会)
  • Neue Internationale Wirtschaftsordnung(新国際経済秩序)
  • Das Scheitern von Bandung(バンドン会議の失敗)

 

 個人的には、バンドン会議のような「南南」連帯を「闘争のグローバル化」の一部として捉えて議論している点が興味深かったです。

 

アーデナウアー政権下のドイツ社会民主党へのスパイ行為――ツァイト紙より

 2022年5月、ドイツの出版社Ch. Link社から、歴史家クラウス=ディートマー・ヘンケさんの研究成果が出版されます。それは、コンラート・アーデナウアー政権下で連邦情報局が、当時の対立政党であるドイツ社会民主党に対するスパイ活動を行っていたことをテーマとしたものです。

 2022年4月9日、刊行前に、ツァイト紙オンライン版に著者へのインタビュー記事が掲載されました。

 

 

 記事の表題は、「ボンで起きたことは、ウォーターゲート事件以上だ」といった意味です。異例の権力乱用で、連邦情報局が長年にわたって組織的にドイツ社会民主党幹部にスパイ行為を行い、その結果を首相であったコンラート・アーデナウアーに伝えていた、とのことです。法治国家としての、また民主主義のルールを破るものだ、と強く批判されています。

 出版社のリンクはこちら。

 

 

【2022年5月11日追記】

 2022年4月19日、同書についての現代史家ノルベルト・フライのインタビュー記事がツァイト紙オンライン版に掲載されました。