2022年4月12日、パリのドイツ歴史研究所のアフリカ現代史研究者であるローベルト・ハインツェさんによる「グローバルなオルタナティヴとしての第三世界」というタイトルの論説が、ak(analyse & kritik)という左派系ドイツ語新聞ウェブサイトに掲載されました。
冒頭で、ロシアによるウクライナ攻撃が始まった直後、ドネツクとルガンスクの二つの共和国を承認するロシアの決定について、ケニア国連代表マーティン・キマニ氏が語った演説に触れています。
その演説は、国民の自己決定についての二つのモデルを対置するものでした。その一つはロシアが求める民族モデルであり、それをキマニ氏は非難しています。もう一つは「実際的な」モデルであり、それは、彼の見方によれば、アフリカ諸国が脱植民地化に際して受け入れたもので、戦争を避けるために、ヨーロッパ列強に強いられた境界線を承認し、大陸レベルで同時に経済・政治・法的な統合を目指すというものです。
実際には、帝国主義時代にヨーロッパ列強が行った「アフリカ分割」は、脱植民地化後のアフリカでの紛争の要因になったと思われますが、もちろんそれを知りつつも、上のように述べることで、ケニア国連代表は、アフリカ統一組織(OAU)およびその後継であるアフリカ連合(AU)の元来の目標と、ロシアによるウクライナ侵攻に対する非難を結びつけた、と著者は論じています。
ハインツェさんは、ケニアも数年来、反テロ行為の名目でソマリアとスーダンへの境界を侵犯していることを指摘しつつ、ケニアのジャーナリスト Patrick Gathara さんによる批判、つまりアフリカ連合ははじめからアフリカ人エリートのプロジェクトであり、実際の脱植民地化よりも、植民地状況の継続性に関心がある、という側面にも触れています。
こうした前置きのうえで、「第三世界」論の現在地が検討されています。見出しは、以下の通りです。
- Den antikolonialen Moment verpasst(逃した反植民地的機会)
- Neue Internationale Wirtschaftsordnung(新国際経済秩序)
- Das Scheitern von Bandung(バンドン会議の失敗)
個人的には、バンドン会議のような「南南」連帯を「闘争のグローバル化」の一部として捉えて議論している点が興味深かったです。