浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

移行期の東ドイツ社会と移民についてのインタビュー論集

 「忘却に反対し、民主主義に賛成する」(Gegen Vergessen – Für Demokratie e. V.)という協会のホームページに、『東ドイツにおける移民社会と移行社会』というタイトルの論集が掲載されました。

 

 

 この論文集は東ドイツ社会の移行期における生活と経験を伝えるインタビューが核になっているとのことです。移民史の視点も含んだ論集で、ローカルなアクターによる現場での移行期の数年に多様なまなざしを投げかけるものです。

 オープンアクセスで、PDF版がダウンロードできます。こちらにリンクを貼っておきます。

 

ロシア人権団体メモリアルへの連帯の動きについて――ドイツ連邦政治教育センターへの投稿論説

 ロシアの人権団体で、おもにソ連時代の人権侵害を記録する活動を行ってきたメモリアル(Memorial)は、2021年12月28日にロシア最高裁の決定によって解散が決まり、翌日、その判決が下されました。そのおよそ一年後、そのメモリアルは、2022年12月10日、オスロノーベル平和賞を授与されてました。

 その受賞と同日、ドイツ連邦政治教育センターのホームページへの投稿論説が掲載されました。

 

 

 こちらは、およそ1年前のメモリアルの活動禁止とウクライナ戦争の開始以降、ドイツのいくつかの記念施設が、ロシアから出国した人権活動家・歴史家を支援する道を探る連帯の活動を紹介するものです。

 「メモリアル・インターナショナルへの支援とその地域的加盟連合」、「国家のシナリオにそった清算」、「ブランデンブルクからの記念館抗議」、「広がる連帯のネットワーク」などの見出しが続きます。

 

 以前にこのブログでも、メモリアルへの連帯の動きを紹介しました。関心のある方はどうぞ。

 

 

ブレーマーハーフェンの「ドイツ移民の家」博物館とキューバ=ドイツ関係史特別展

 東ドイツ時代から今日までのキューバ=ドイツ関係史を扱った展示が、ブレーマーハーフェンにある博物館「ドイツ移民の家(Deutsches Auswandererhaus)」で開催されています(2023年2月28日まで)。

 

 

 冒頭の趣旨説明部分を要約します。

 

 1960年代からベルリンの壁の崩壊まで、およそ3万人のキューバ人が、東ドイツに研修・留学・雇用のために訪れていました。そのなかには今日までドイツ連邦共和国で生活している人もいます。この特別展では、10人の男女とその子どもが社会主義時代のドイツ民主共和国における日常生活について語ります。どのように仕事と学校を経験し、友情と新しい愛情が生まれたのでしょうか。1989年秋の平和的な革命は、彼ら・彼女らにとって一大事であり、また人種主義とナショナリズムに刻印された1990年代も同様でした。映像、インタビュー動画、写真、個人の思い出の品々はその歴史を生きづかせます。

 

 キューバ東ドイツ関係史は今まであまり思いつきませんでした。この特別展を訪れることは難しそうですけれども、興味深いテーマですね。

 

1990年代の右翼の暴力――ドイツ連邦政治教育センターより

 ドイツ連邦政治教育センターが発行する雑誌 Aus Politik und Zeitgeschichte(APuZ、政治と現代史から)の2022年12月号の特集は、「1990年代における右翼の暴力」です。無料でPDF版がダウンロードできます。

 

 

 内容紹介を要約します。

 

 1990年代初頭には、新たに統一されたドイツで右翼の暴力の波が記憶に刻まれている。いわゆる「野球バットの年」の右翼の暴力とその同時代的な受容を振り返るなかで、「平和的な革命」と「再統一」の背景にあった時代像におけるニュアンスが可視化される。

 

 現在、ドイツの論壇では、ベルリンの壁の崩壊と東西ドイツ統一の記憶が問い直されており、その一環ですね。

 

【2023年2月1日追記】

 関連するポッドキャスト番組のリンクを貼っておきます。

 

 

【2023年10月12日追記】

 ブランデンブルク州における右翼の暴力についての論文集が刊行されました。リンクを貼っておきます。

 

 

ゲッティンゲン・ポストコロニアルの映画プロジェクト

 ゲッティンゲン・ポストコロニアルという地域から植民地主義を批判するポストコロニアル的社会活動を行う団体があります。

 そのウェブサイトでは、クラウドファンディングによるドキュメンタリー映画の制作プロジェクトが紹介されています。最近、知りました。

 

 

 この団体は、2022年夏にセネガル人の映画監督イブラヒマ・ンディアイェ・サル(Ibrahima Ndiaye Sall)氏を招待し、ともに映画制作に取り組んでいるとのことです。