浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

ナチ犯罪と戦後補償――「ゲットー年金」受給資格の新たな判例

 ナチ犯罪、戦争責任、戦後補償に関連する記事を目にしました。『南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)』2020年5月20日付のものです。*1

 同日、ドイツ連邦社会裁判所がナチ・ドイツ占領下ポーランドのクラカウにある村で少年時代を過ごした91歳男性に「ゲットー年金」受給資格を認める判決を出しました。

 1939年に村は占領され、ユダヤ系家族は移動の自由を自宅のみに制限されました。

 まだ少年であったこの男性(ヘルベルト・B)は、1940年1月から1942年3月の間、ドイツ駐留軍の敷地と軍用トラックの清掃作業に就き、「賃金」として追加の食事を受け取っていたとのことです。

 ちなみに、1942年3月、近郊の比較的大きな都市に住んでいたユダヤ系住民を含めて全て射殺されたと指摘されています。

 従来の「ゲットー化」事例は強制収容所での生活でしたが、さらに適用範囲を広げ、村での自宅隔離の事例でも「ゲットー化」が認定されました。これが「ゲットー年金」受給資格についての新たな判例になると報道されています。

 2010年にナチ・ドイツ統治下の強制収容所での労働に年金受給資格を認める歴史的判決がありました。この「ゲットー年金」は1997年まで遡って支払われているそうです。

 今回の判決はナチ・ドイツ統治下の「ゲットー」の定義が争点となりました。次に別の事例(ある未亡人の訴え)をめぐる裁判が待っているとのことです。

*1:2020年6月2日Twitter「あさだしんじ」でツイートした内容を改めたものです。