浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

AAS(アジア研究協会)によるオンライン・ハラスメントに関する声明

 オンライン・ハラスメントについて勉強中です。

 2021年9月29日、Association for Asian Studies(AAS、アジア研究協会)がオンライン・ハラスメントに関する声明をウェブサイトにて公表しました。

 

 

 この声明の直接の契機については具体的に明らかにされていませんが、冒頭では、第二次世界大戦期の日本について研究成果を積んできた歴史研究者をオンライン上の攻撃対象とした研究者に対するハラスメントを告発する、と説明されています。

 そのうえで、「学問の自由」が「教育・研究の基準」を決める根本原則であって、「自由な科学調査は説明と説明責任を必然的に含んでいる」といいます。そのうえで、学問に誠実であるように、その基準を互いに守る義務があると指摘します。具体的には、それは他者の研究成果を「真摯に表現し、その主張が内実をともなうように適切な証明を提供し、一次史料を注意深く読み、的確に解釈」すること、そして「他者の着想に適切に謝辞を記すこと」を意味すると述べています。

 現在、研究者がリサーチ・オンラインを活用することが、学者だけではなく、一般の読者層に向けて、自らの成果を紹介する手段になる一方で、ソーシャル・メディアが政治的に論議を呼ぶ話題を提供する研究者へのオンライン・ハラスメントを引き起こすことにもなっていると指摘されています。そのハラスメントは、ネット市民に対して攻撃するように教唆するような行為も含まれるといいます。

 そして、そうしたハラスメントに対して、大学・学会誌・学会に組織的に対応することを求めています。つまり、ハラスメントを受けた研究者を保護し、支援することです。具体的には以下のステップが推奨されています。

 

  1. 人身攻撃をブロックし、SNS運営会社に通告する
  2. 学問的用語では生まれない悪意ある質問や根拠のない批判に関わることを拒否する
  3. オンライン上の嫌がらせを受けた時、アカウントに鍵をかけ、ハラスメントを通告する。ツイッター・ブロック・チェーンのような拡張機能はオンライン上の嫌がらせを緩和するためにまとめてブロックできる。
  4. ズーム爆弾(混乱を目的とした画像、あるいは人種主義的・女性嫌悪的な発言によるズーム・ルームの妨害的乗っ取り)を避けるために、Zoomの公共向けイベントに進んだ登録方法を要求する。

 

 日本の歴史関係学会もオンライン・ハラスメントへの組織的対応が求められるでしょう。