オンライン・ハラスメントについて色々と勉強する必要がありまして、2019年6月にアメリカ歴史学会(American Historical Association、AHA)が採択・公表したガイドラインの内容を要約しておきます。
そこでは、歴史家の仕事がデジタル化の時代のなかで嫌がらせや脅迫されることなく、議論されることを歴史家は期待する権利があるといいます。そのうえで、歴史家のこの権利がヘイト・スピーチやオンライン上の脅迫、「晒し」、挑発ほかの悪意あるサイバー攻撃を行う人たちにたびたび侵害されていると指摘しています。
そのうえで、AHA会員に対して、オンライン・ハラスメントへの対処方法を助言しています。
まず、予備的な処置として、以下の5点が推奨されています。
- 電子メールやSNSアカウント、PCなどのセキュリティを強化し、必要な場合にはサイバー・セキュリティ専門家の助言を考慮すること
- 個人のウェブサイト、掲示板ほかの投稿を通して入手できる情報を含めて、定期的に自分のオンライン情報を監視すること
- 雇用主に規則を遵守するセキュリティ・プロトコル・スタッフの確保、あるいはそのスタッフのチェックを求めること
- 雇用主が提供するオンライン・ハラスメント対応のリソースに習熟すること
- ハラスメントの標的になった場合に、支えてくれる友人・同僚のコミュニティを作ること
そのうえで、ハラスメントが始まったときの対処法として、以下の5点が推奨されています。
- ただちに所轄の警察署に確信できる脅威を通報すること
- ハラスメント加害者をブロックし、関わりを持たないこと
- 電子メールにスクリーンをかけるなどのサポートができる友人・同僚のコミュニティに協力をえること
- 上司(学科主任および/ないし学部長)に知らせ、また雇用主のセキュリティ担当部署およびIT部署ほか関連部署に知らせること。また自分を守るように機関のリソースを用いるように主張すること
- ハラスメント加害者が現れたプラットフォームへハラスメントを報告すること
そのほかに有益なリンク先がリストアップされています。2つほど紹介しておきます。
まずはAHAの関連声明から。
こちらは科研費の特別推進研究のウェブサイト「地域歴史文化の創成」に訳文が掲載されています(「AHA専門職行動基準書」川邊咲子、亀田尭宙、後藤真訳、2021年3月12日公開)。
次に、アメリカPEN協会によるオンライン・ハラスメント対応マニュアルです。