浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

ヴァイマル期ドイツの議会制民主主義をジェンダーの視点から読み解く往復書簡集

 2022年8月26日、ドイツ語圏の歴史系総合ポータルサイト H-Soz-Kult で、1919年から1925年までに、フランクフルト・アム・マインで住んだ夫妻、ヨハンナ・テッシュとリヒャルト・テッシュの往復書簡集についての書評が掲載されました。ジェンダー史の視点から、民主制・議会制を研究する重要な史料として紹介されています。

 

 

 内容を少し要約します。

 ヨハンナ・テッシュは当時、ドイツ社会民主党議員として国民議会に選出され、1924年まで国会議員として活動しました。そのきっかけは、フランクフルト・アム・マインドイツ社会民主党員として、党と労働者福祉活動を宣伝する演説活動に取り組み、執行部役員であったことでした。彼女はヴァイマル共和国の最初の女性国会議員の一人でした。その夫リヒャルト・ティッシュは、家で社会民主党系日刊紙 "Volksstimme" の仕事に従事し、息子を育て、家事や庭仕事を分担しました。

 この往復書簡集は、1909年から1945年までの354通の手紙・ハガキを収録しているとのことです。そこでは社会民主党員として働く日常、彼女のネットワーク、選挙戦、そして夫妻の政治・経済的憂慮や計画が述べられているそうです。それは経営協議会法、カップ一揆、ヴァルター・ラーテナウ暗殺事件といった社会的に激しく争われた時代にあたるといいます。

 興味深い史料ですね。