浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

ギリシャの対ドイツ戦争賠償要求について

 2022年6月、ギリシャの外交官であるアリース・ラディオプロス(Aris Radiopoulos)氏が執筆した、第二次世界大戦時のギリシャの被害についての対ドイツ賠償要求を扱った本のドイツ語版が、メトロポール出版社から刊行されました。

 

 

 出版社の本紹介によると、ギリシャ外務省の膨大な文書を精査し、第二次世界大戦後のギリシャによる対ドイツ賠償要求の諸段階を明らかにした研究です。

 

 ギリシャの対ドイツ戦争賠償要求について、近年、ふたたび関心が高まっています。こちらは冷戦構造のもとで封じ込められてきたテーマですね。

 

 2023年1月25日にこのテーマについて著者を招いた討論会がYouTubeで視聴できます。

 

 

 この討論会を協賛したローザ・ルクセンブルク財団のウェブサイトでは、簡単な説明文が掲載されています。

 

 

 以下に要約します。

 

 ドイツ国防軍による1941-1944年のギリシャ占領は、多くの地を「焦土化」した。ドイツ社会と異なり、ギリシャでは占領の暴力行為はきわめて生々しい記憶のままである。いまなおギリシャは、ドイツに対して戦争賠償要求を掲げている。そのうえ、ドイツによって負わされた強制借款の返済が課されている。ギリシャとは反対に、ドイツ政府はこの問題は終わったものと見なしており、2021年にドイツ連邦議会で提案されたこの立場の変更をもとめる動議は、多数決をもって拒否された。

 2023年1月25日、ベルリンの「民主主義および人権の家(Haus der Demokratie und Menschenrechte)」のホールで80名以上の聴衆をともない、ドイツはギリシャに補償を支払うべきか、あるいは歴史の一章としていまでは本来、過去のものに属すべきものなのか、という問いへの活発な討論が繰り広げられた。