浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

1920年代ベルリンの女性――tipBerlinのオンライン記事について

 2021年4月26日、ベルリン情報誌 tipBerlin のウェブサイトに、1920年代ベルリンの女性に焦点をあてた記事が掲載されました。

 

 

 「1920年代にベルリンでの女性の状況は劇的に変化した。」というリード文で始まります。そして、12枚の写真とともに解説文を載せています。講義などで当時のベルリンを紹介する際に使えそうです。

 それぞれ写真につけられた見出しと簡単な解説を付しておきます。

 

  • Selbst ist die Frau・・・裁縫といったDIY的な手仕事が、女性の自立と結びつくキャリアと事業の成功へ。
  • Mit Pferde in Mitte・・・路面電車が電化した時期ではあるものの、まだ馬車は日常であり、”Pferdemädchen”という就業女性の言い回しがあった。
  • Frau Kernchen aus Berlin・・・バイク・レースに参加した女性、ケルヒェンについて。当時、センセーションを巻き起こす。
  • Neue Modetrends・・・都市女性の新しいモードと解放。
  • Der Aufstieg der Diven・・・舞台での女性スター歌手の登場。
  • Im Gymnastiksaal・・・民主主義と都市市民社会の表現としての体操、スポーツ革命の一部としての女性。
  • Sonne tanken・・・海水浴のモードと女性。
  • Hipster-Girls・・・ジャズ、ヒップホップと女性。
  • Marga von Etzdorff fliegt los・・・伝説的女性パイロット、マルガ・フォン・エッツドルフについて。
  • In den Goldenen Zwanzigern・・・「黄金の20年代」の女性たち。
  • Tanz den Unterschied・・・モッツ通りのエルドラドで踊るトランスジェンダー、同性愛者たち。少なくともナチ政権掌握以前は、同性愛者も居場所を見つけることができた。

 

ナチ・ドイツによるユダヤ系犠牲者名簿オンライン検索――ドイツ連邦文書館より

 ドイツ連邦文書館は、1933年から1945年までのドイツでナチ支配のもとで迫害されたユダヤ系犠牲者を祈念した、オンライン検索できる名簿を公開しています。英語版とドイツ語版があります。

 

 

 今年度はドイツ語外書講読を担当していますが、そこで出てきた人名を検索したら、きちんと反映されていました。氏名、出生年月日・出地、居住地、収容先、強制収容所の移動記録、そして最後に亡くなったところまで、簡潔に表記されています。身につまされます。

 

 また国・地域別の強制移送を記録した年表もあります。関心のある方はどうぞ。

 

 

【2021年7月7日追記】

 このオンライン検索名簿についてのドイツ連邦文書館による解説はこちらになります。

 

 

「フェイクニュースとしての背後の一突き伝説」――ドイツ連邦文書館より

 ドイツ連邦文書館のホームページに「『フェイクニュース』としての背後の一突き(匕首)伝説」という記事が掲載されています。

 

 

 この記事では、いわゆる「背後からの一突き」(あるいは匕首)伝説を、ドイツ陸軍によって第一次世界大戦でドイツが敗戦した原因が前線ではなく、銃後の革命勢力、ストライキ運動、そして左翼の政党・政治家の和平に向けた取り組みによって「背後から襲われた」と主張されたものと説明されています。

 以下にこの記事を要約します。

 ドイツの敗戦原因をめぐる戦争責任問題、「背後からの一突き」伝説は、ヴァイマル共和国とその指導的な政治家たちにとって大きな負荷になりました。そして、この「背後からの一突き」伝説は、右翼の諸政党・諸集団によってヴァイマル共和国政治体制を不安定化させるものでした。

 そして、この問題の解明に向けて、いくつもの議会の調査委員会が設置されました。なかでも第2次調査委員会は陸軍最高司令部を招致し、「開戦原因と戦時の経過の解明」に取り組みました。

 1919年11月18日、招致された総元帥パウル・フォン・ヒンデンブルクは、調査委員会で、イギリス将校の弁といって「ドイツ軍は背後から刺された」と主張しました。それによって、彼は意図的に敗戦の原因を「銃後」に求める噂を強め、拡散させました。

 

 これらの調査委員会についての史料と同時代の関連刊行物は、「R 43 I Reichskanzlei」のファイル名で、ドイツ連邦文書館に所蔵されているとのことです(R 43 I/803-811)。

 

 このウェブ記事では、そのなかの一つ 『勝利の掌握は間近だった(Der Sieg war zum Greifen nah!)』(エーリヒ・クットナー編、1921年)という冊子の表紙の画像が掲載されています。挑発的なタイトルでしたが、この冊子は1918年の戦争終結時の軍事的な状況と、戦争が軍事的な側面から敗北したことを証明しているとのことです。同冊子についてのクルト・トゥホルスキーによる書評へのリンクも掲載されています。

 

 クルト・トゥホルスキーらヴァイマル共和国期の平和主義については、竹本真希子さんの研究をどうぞ。

 

 

フリッツ・バウアー特別展――「テロのトポグラフィー」より

 ナチズムによるホロコーストの犠牲者を追悼する祈念施設・野外博物館「テロのトポグラフィー」がベルリン国会議事堂の近くにあります。すでに多くの方が知っていると思います。

 2021年5月22日から10月17日まで、同館でフリッツ・バウアー特別展が開催されています。以下のウェブサイトの特別展ページにその情報が掲載されています。

 

 

 このブログで以前にフリッツ・バウアー研究所について少し紹介しました。関心のある方はどうぞ。

 

 

 また、「テロのトポグラフィー」について言及したラインハルト・リュールップ氏の公開講演を翻訳したことがあります。PDFはこちら。

 

 

ホロコースト史料集VEJの全巻刊行によせて

 2021年、De Gruyterより出版されている ホロコースト史料集 Die Verfolgung und Ermordung der europäischen Juden durch das nationalsozialistische Deutschland 1933–1945(VEJ、ナチ・ドイツによるヨーロッパ・ユダヤ系住民の迫害と殺害、1933-1945年)の第15巻(ハンガリー、1944ー1945年)が刊行されました。

 これで、本シリーズの全16巻が揃ったことになります。出版社の紹介サイトはこちらになります。*1

 

 

 編纂にあたったミュンヒェン現代史研究所のプロジェクト紹介サイトへのリンクはこちらです。

 

 

 この一大プロジェクトについて、編集にあたった中心メンバーの一人、ズザンネ・ハイム氏へのインタビュー記事がツァイト紙オンライン版に掲載されています。

 

 

【2021年11月4日追記】

 2021年10月5日、ノイエ・チューリッヒャー・ツァイトゥング紙に関連記事が掲載されました。

 

 

【2022年4月21日追記】

 英語版刊行プロジェクトについてはこちら。

 

 

【2023年3月7日追記】

 関連イベント(2023年5月9日-11日、於フライブルク)の案内はこちら。

 

 

【2023年9月15日追記】

 『デア・フライターク(金曜日)』誌の2023年第30号に、VEJの編集に20年以上たずさわった現代史研究者ディーター・ポールさんのインタビュー記事が掲載されました。

 

 

【2023年11月20日追記】

 YouTubeに関連イベントの動画14本がアップされています(最終更新日は2023年8月14日)。リンクはこちら。