浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

アーロルゼン・アーカイブズについて――ナチ迫害の犠牲者・生存者史資料を収集する国際センター

 ナチズムを専門に研究しているわけではないのですが、私の経済史ゼミでもだいたい毎年一人はナチズムに関する卒論をテーマにする学生が出てきます。

 2020年5月9日、ナチ迫害の犠牲者・生存者に関する史資料を収集する国際センター、アーロルゼン・アーカイブズが2020年EU文化遺産賞を受賞しました。

 アーロルゼン・アーカイブズについては、国立国会図書館による世界の図書館情報発信サイト「カレントアウェアネス・ポータル」が2020年4月21日付の記事のなかで詳しく説明しています*1

 同史料館はインターネット上での史料公開・情報発信にとても力を入れています。「カレントアウェアネス・ポータル」の記事でも紹介されているとおり、アーロルゼン・アーカイブズのウェブサイトは、2020年4月14日、ナチ迫害の犠牲者・生存者に関する2600万点の史料をオンライン公開しました。今回の取り組みでは、強制労働と強制移送についての史料公開に力点を置いたとのことです。

 同サイトでは、オンラインでの図書館や展示、教育プロジェクトを進めています。現在のオンライン展示は「#StolenMemory」です。右のリンク先は解説ページで、そのサイトの下にオンライン展示のリンク先があります。

 ナチ政権下の強制収容所では、収容された人たちの時計や装飾品、結婚指輪、手紙、写真などの個人的な所持品が奪われました。アーロルゼン・アーカイブズは遺族の手に届くまで、強制収容所に収容された人たちの所持品を保管しており、その点数は2700点ほどあるとのことです。2016年からこれらの遺品を遺族に戻すキャンペーンを開始し、数百の遺族の手に戻されたと説明されています。

 オンライン展示では遺品を通じて、犠牲者の短い解説が付してあります。遺族の手元に戻った事例、まだ探索中の事例に分けられており、ナチによる迫害が「生きた過去」であることを感じます。