浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

現代ドイツと植民地主義論争――メディコ・インターナショナルより

 2021年9月21日、ドイツのフランクフルト・アム・マインを本拠地とする人権団体メディコ・インターナショナル(Medico International)のウェブサイトに、ハンブルク大学でドイツ植民地主義の研究で知られるユルゲン・ツィンメラー(Jürgen Zimmerer)さんへのインタビュー記事が掲載されました。ちなみに、メディコ・インターナショナルは、地雷禁止国際キャンペーンを結成した6団体の一つです。

 

 

 植民地主義の時代における文化財の強奪とその返還をめぐる政策のなかで、最初の一歩は踏み込んだけれども、その後の動きが滞っているとして、ドイツの政策を批判的に語るものです。

 たとえばベニン・ブロンズを例に、ドイツ政府は返還すると明言したけれども、どのように、またどれほど返還するかがはっきりせず、具体的なことが分からないといいます。そして、ベルギーの場合、現在のコンゴに由来する文化財の返還を決議し、強奪されたと確認できるものについて、公式にもはやベルギーの所有物ではなく、コンゴに返還する具体的な可能性がみえると述べ、ドイツとの違いを論じています。

 後段で、ナミビアの例やドイツ植民地主義とナチズムとの関係、気候変動のようなグローバルな政治的挑戦の脈絡にジェノサイド研究を位置づけることなど、現代的な課題についてインタビューのテーマは広がっていきます。

 インタビュー記事のタイトルは、「ヨーロッパは死んでいる」というちょっと驚かせるようなものですが、いちばん最後のところで言及しています。それは「わたしたちが知っていたようなヨーロッパは、たとえそれが歪んだイメージであったとしても、死んでいる。」というものです。これまでのイメージのなかのヨーロッパはすでに存在せず、またそれに固執していては、ポストコロニアルの課題と結びつくグローバルな移民問題や環境問題に対応できない、という趣旨です。