ベルリンの左派系の団体ヘレ・パンケ=ローザ・ルクセンブルク財団("Helle Panke"e.V.-Rosa-Luxemburg-Stiftung)のウェブサイトに、2023年4月17日に開催された討論会「今日の共産主義研究――スターリン主義検証の現状について(Kommunismusforschung heute. Zum Stand der Stalinismusaufarbeitung)」のYouTube動画がアップされています。
ヘレ・パンケ協会のウェブサイトには、この企画の趣旨文が掲載されています。リンクを貼っておきます。
趣旨文の冒頭を紹介します。
70年前にスターリンが亡くなりました。恣意的・大規模な拷問・殺害は終わったものの、しかしソ連の終焉によってようやく、証言者や文書によってこの時代の犯罪がようやく歴史的に検証できるようになりました。1930年代の「大テロル」のメカニズムとソ連政治中枢の政治的背景も目に見えるようになったのです。「収容所群島」(ソルジェニーツィン)の数百万の犠牲者の顔も見えるようになりました。どの研究結果によっても、スターリン主義が人道に対して犯罪的で、社会主義の理想に敵対するものであって、未来の社会的なオルタナティヴではなかったということが支持されました。
そのうえで、ここ30年でモスクワの歴史政策が変化し、スターリンの歴史的役割は相対化され、オープンな検証が近年もはや望まれなくなったと指摘しています。この討論会は、新型コロナ感染症への対応による中断を経て、ウクライナにおける戦争という危機的状況のなかで、現在のスターリン主義の歴史的検証という課題が抱えている困難について議論するものです。
登壇者は、2022年にノーベル平和賞を受賞した人権組織メモリアルの創設メンバーであるイリーナ・シェルバコワさん(ドイツ学・文化研究)、ズザンネ・シャッテンベルクさん(ブレーメン大学、東欧現代史・文化研究)、カートヤ・マクホーティナさん(ボン大学、東欧史)です。
メモリアルについては、このブログでも少し言及しました。
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「IALHI(労働史研究機関国際協会)よりロシア人権団体『メモリアル』閉鎖の危機を憂慮する声明」浅田進史研究室/歴史学ブログ、2021年12月1日
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「ロシア人権団体メモリアルへの連帯の動きについて――ドイツ連邦政治教育センターへの投稿論説」浅田進史研究室/歴史学ブログ、2023年1月19日