浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

「植民地スキャンダル」――1894年、A・ベーベル、帝国議会に鞭を持ち込んでドイツ植民地政策を批判する(Das Parlament、2020年1月6日)より

 アウグスト・ベーベルは、19世紀末から20世紀初頭にかけてドイツ社会民主党の中心人物の一人です。1894年2月、彼が帝国議会で鞭を持ち込んでドイツ植民地政策を批判した事件も比較的知られた事件かもしれません。

 ベーベルは持ち込んだ鞭を手に、ドイツ植民地官吏が裸のアフリカ人女性を流血するほどに鞭打ちしていると非難しました。この演説は、「植民地スキャンダル」として、ドイツ国内世論を巻き込んだ議論の幕開けとなりました。

 Das Parlamentという新聞の2020年1月6日号に、「スキャンダルの力」という題でこの事件を振り返る論説が掲載されました。オンラインで公開されています。*1

 この副題にありますように、「スキャンダル」が世論を喚起し、また議論が議会の影響を強くする点に注目した記事です。

 議会と世論はともに影響を与えあい、議論を深めることが望ましいでしょう。気づきにくい、あるいは見て見ぬふりされやすい問題について、どう議論を触発するかというテーマについての歴史的事例ですね。そうかんがえると、ゼミや講義で取り上げてよいテーマの気がしてきました。この事件、ジェンダーの視点でも読解できますし。

 ちなみに、このDas Parlamentの号全体がドイツ植民地主義の過去とその向き合い方について取り上げています。オンライン紙面版へのリンクはこちらからどうぞ。

*1:Verrückte Geschichteの2020年6月14日のツイートでこの記事に気づきました。