浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

ドイツ技術博物館における大西洋奴隷貿易の展示替え――「犠牲者の語り」からの脱却

 2020年8月21日のベルリン日刊紙『デア・ターゲスシュピーゲル(Der Tagesspiegel)』のウェブサイトに、ドイツ技術博物館にある「海運(Shifffahrt)」部門の展示内容についての記事が掲載されました。

 

 

 このタイトルは「人間の檻とともに取り払う――技術博物館における黒人史はもはや犠牲者の語りのみではあってはならない」という意味です。

 この博物館の「海運」部門の奴隷制についての展示が批判されたため、その展示が入れ替えられました。その経緯について解説されています。

 ブランデンブルク辺境伯の時代からプロイセンは、"クーア・プリンツ" 号をはじめ、大西洋奴隷貿易に関与していました。技術博物館には、1700年頃、ブランデンブルク伯の委託でおよそ2万人がアフリカ西海岸からカリブ海地域に連れ去られましたが、そのときの船舶のモデルが展示されていたそうです。

 ベルリンのアフリカ系コミュニティは、その歴史の展示内容について、トラウマとなる歴史が単純化され、不適切な展示となっていると批判しました。それは「受動的で、自己の、抵抗のない歴史」が描かれることに対する拒絶でした。

 展示内容は、アメリカ=ナイジェリアの出自をもつ芸術家とドイツ=ガーナの出自をもつ同僚が協力した行ったとのことです。この記事のなかでは、このことを、「博物館の脱植民地化」と評しています。

 次にベルリンを訪問する際には、ぜひ観覧したいですね。

 ドイツ技術博物館と「海運」部門のウェブサイトへのリンクも貼っておきます。