2020年、ミヒャエル・フライ『1968年以前――ドイツ連邦共和国とアメリカ合州国における冷戦と新左翼』と題した研究が公刊されました。
その書評が2020年8月25日付の『南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung
)』のウェブサイトに掲載されました。
この書評では、本書が1968年以前、つまり1950年代から1960年代にかけてどのように、そしてなぜ新左翼が形成されたのかについて論じるものであり、そのトランスナショナルな抗議の構成を広い視野で提示していると高く評価しています。
本書では、1954年にビキニ環礁での米国による水爆実験によって被爆した「第五福竜丸事件」と、1957年における西ドイツのコンラート・アーデナウアー首相による戦略核兵器に関する言及、さらに翌年のNATOの枠内での核武装にの議会承認を関連づけて叙述されています。そして、これらの出来事がグローバルな平和運動を高揚させ、1958年に核兵器反対のキャンペーンと並んで、西ドイツで数多くの学生委員会が結成されたとのことです。
そのほかにも色々と紹介されていますが、総じて本書は新左翼の形成に関するグローバルな視点からの1950年代論といえそうです。
この研究は、2019年のヴィリー・ブラント現代史賞を授与されました。そのときの記事がこちらです。
この記事をみると、ノルベルト・フライ(Norbert Frei)氏がこの本の元になった博士論文を指導したことがわかります。いくつか日本語訳の本がありますが、ここで取り上げるべきは以下のものでしょう。