浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

現代ドイツにおける移民の権利向上に向けた多様な取り組み――ローザ・ルクセンブルク財団ウェブサイトより

 現代移民問題への社会的な関心が高まっていますが、ローザ・ルクセンブルク財団のウェブサイトに次のような論説が掲載されました。

 

 

 この論説では、日常的な人種主義、国外追放、排除に対抗するアジア・アフリカ系移民グループの様々な取り組みが紹介されています。

 ラインラント=プファルツ州では3年前から毎年2月を "Black History Month" とし、2020年は「アフリカ系ドイツ人の抵抗」の標語を掲げたとのことです。

 抵抗はたんにデモや請願などの具体的な活動だけを指すのではなく、たとえば差別的な言説に対する「対抗する語り」を確立したり、アフリカ系ドイツ人のような存在を可視化する取り組みが含まれています。

 代表的なグループとして、Antifa Gençlik、Kanak Attak、The Voice Refugee Forum、Lampedusa in Hamburgなどが挙げられています。

 この論説では1990年代以降の動向を振り返っており、重要な論集の表紙の画像を掲載しています。面白いです。

 たとえばハンブルクでは人種主義に対抗する運動は、サブカルチャーのミュージシャンたちによって始まり、それをうけてハンブルク福祉委員会が取り組みをすすめ、そこでは「国民よりもいくらか良いものを(Etwas Besseres als die Nation)」という議論を提起したそうです。

 そのほか、Antifa Gençlik や Kanak Attak の活動が紹介されています。

 サブカルチャー文化と移民権利向上のための活動の動きは、HipHopと密接に結びついてきたことが説明されています。以下のリンクからYouTube動画が紹介されています。

 

 

 この論説では、ドイツ社会のなかの移民出自の人たちとそうでない人たちとの裂け目についても述べられています。そこでは、2001年の Brothers Keepers によるラップソング "Letzte Warnung(最後の警告)" へのリンクとそれをめぐる議論が紹介されています。この曲は、2000年6月にデッサウでネオナチによってアフリカ系ドイツ人アルベルト・アドリアーノ氏の殺害に対する反応でした。

 

 

 有名な話なんですね。英語版やドイツ語版のウィキペディアで説明があります。

 そのほかにも様々な取り組みが紹介されて、文献紹介も豊富です。