浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

フェミニズム図書館MONAliesAの研究プロジェクトについて――デジタルドイツ女性アーカイブより

 ドイツ・ザクセン州の都市ライプツィヒに女性とジェンダーをテーマにしたフェミニズム図書館 MONAliesA Leipzig があります。2022年9月1日、その図書館が進めるデジタルドイツ女性アーカイブの研究助成プロジェクトについての紹介が掲載されました。

 

 

 タイトルは「離婚、再統一、すべて違うものに――体制転換はドイツ民主共和国で離婚した女性にどのような影響を及ぼしたか」という意味です。

 同プロジェクトでは、MONAliesA はドイツ民主共和国離婚女性協会(Verein in der DDR geschiedenen Frauen e.V.)の資料を整理・検証することを目的としているとのことです。

 

 冒頭部分を要約します。

 年金移行法(Rentenüberleitungsgesetz)は、旧東ドイツ出身の数千の女性に日常に実際的な影響を及ぼしました。この法律は、1990年の転換期の産物で、それはすべての東西ドイツ市民女性の年金を同等に扱うはずのものでした。しかし、この年金移行法と現在の年金制度では見過ごされている10万人以上の女性がいることは知られていないと言います。

 その女性たちとは、東ドイツで離婚していた女性たちです。彼女たちには、独居の女性のための個別規定を不要にする特別な東ドイツ年金規定も、西ドイツで効力をもった離婚・独居の女性の年金補償も該当されていないと指摘されています。彼女たちの年金は、西ドイツで離婚した女性よりも、あるいは扶養義務を持たない男性よりも明らかに少ないとのことです。そして現状のドイツ連邦共和国には、この旧東ドイツ出身女性が抱える高齢者貧困問題のための政治的ロビーがほとんど存在しないと述べられています。

 

 このプロジェクトがその資料整理・検証に取り組む、ドイツ民主共和国離婚女性協会ですが、そのメンバーは2010年にストラスブールの人権裁判所に訴訟を起こし、また国連の女性差別撤廃委員会によるドイツ連邦共和国への警告を実現したそうです。

 

 MONAliesAについては、以前にもこのブログで取り上げたことがあります。関心のある方はどうぞ。