浅田進史研究室/歴史学

研究・教育・学会活動ノート

Grenzenlos――植民地主義から問い直すハンブルクの歴史展示

 ドイツ植民地主義にかかわる歴史展示の紹介です。

 ハンブルクの労働博物館(Museum der Arbeit)で、2020年9月30日から2021年4月1日まで "Grenzenlos: Kolonialismus, Industrie und Widerstand" と題した特別展示が開催されています。副題は「植民地主義、工業、抵抗」でよいのですが、主題のGrenzenlos はどう訳しましょうか。直訳すれば「限りない、果てしない、度を越した」となりますが、開催趣旨を読みますと「国境に限られず過去を振り返ろう」という感じに理解しました。

 

 

 「ハンブルクはヨーロッパ植民地主義の経済的中心地のひとつだった」の一文から趣旨説明が始まります。そして、「植民地からの商品・原料の多くが港を経由してこの都市に到着し、当地の工業で加工された」と続きます。展示の場である労働博物館の敷地もかつてゴム加工工場だったとのことです。

 ハンブルクには、ゴム、熱帯植物性油脂、カカオ、象牙の加工業でドイツのみならず、ヨーロッパで主導的地位にあった企業があったといいます。

 この企画には、「ハンブルクの植民地工業」と題した特設サイトや語彙についての説明サイトも立ち上がっています。

 

 

 このなかの油脂加工業についての "Die Harburger Ölmühlenindustrie" の項目はわたしには見逃せません。象牙加工やカカオ・チョコレート工業の会社についての解説もあります。さらに、ハンブルク都市図に植民地的痕跡をマップ化したページもあります。

 この展示企画についてのインタビュー記事はこちらになります。

 

 

 現在、新型コロナ感染症の再拡大のため、展覧会は休止しています。まさにわたしの研究テーマに重なりますので、直接、観覧できないことがとても残念です。ハンブルクには2度ほど訪れたことがありますが、この地図を片手にまた行こうと思います。

 ハンブルクにおける植民地主義をめぐる論争については、こんな記事も書きました。あわせてご覧ください。